(或る)「男と女」の『居場所』

@DojoKota

第1話

心臓の音赤信号。

いつも通りの『日常』交差点。あたしが、目を覚まして、やってくるまで何事も滞りなく済んでいる。

暗い影などどこにもない。

小さな魅力がいっぱい詰まっている。

鼻血がぽたぽた垂れている。便所の中で鼻血が垂れている。

青く光っている。殴られたのか、青く、光っているではないか。

真昼間かなにをみているのだろう。

あたしの、て、のひらの産地/山地、尿酸値。

光っているとアゲハ蝶を捕まえやすくなるのであろうか、蜘蛛の巣がきらきらと光っている。アゲハ蝶も光っている。あたしの祖母の真っ白な髪の毛も、太陽に反射して、ひかっている。ひからびているのは祖母のことだ。

沼におっことした。

車をおっことした。

大惨事だ。

人が、お亡くなりになる。


心臓の中に首がある。首の中にまた心臓がある。

埋め込まれている。子供の首が心臓に埋め込まれている。

大人の首に、子供の心臓が押し込まれている。

そのような状況を引き起こしたのは、あのひとだ

あのひとがすべて


というゆめを見た

その夢の所在地にあたしは存在しとらんかったので、なんだかゆめを見たときのような

気分がした

あたしはそれを見聞きして看守していた感取していた。ただ、感じ取るだけの夢であった。

ということは、あたしの感覚機関のほうが、夢より大きいことになる。

そして、夢の世界は、あたしより小さな世界。

そこにあたしはおらなんだ。


村が一つあった。

あたしはその村のすみっこにくらしていた。

ただそれだけの村があった。

すみっこといってもただ土地が広がっていた。

だれもより集まって暮らすことはなく、家々が散開していた

その大きな村の端っこに、あたしの家があった。

あたしが生まれた家があった。

家があった。

家が、

ぼかーん、

とあった。

もえさかっていた。


あたしの家はいつもいつも燃え盛っていた。奇妙なことがあたりいったい撒き散らされていた。ぱちぱちと燃えていた。爆ぜていた。ばふんばふんと煙のように圧縮された透明な空気が熱に煽られて塊となってあたしのほほを撃った。ははをうった。あたしのははのほほをぼふん。


そんなことはどうでもよかった。

一等に水色の空に手を伸ばすとそこからは水が汲めた

仮に決めておいた朝顔の色が紫。

朝顔が咲いた最多咲いた最多咲いた。

これまでの人生で一番咲いた

最多だった。

空一面に、朝顔の反射が投影されたらしい


ということを知ったのは小学一年生のころのはなし

村立小学校には、あたしと、

文字の読み書きができない大人がたまに通っているだけであった

いな


母方の祖母が、爆風で、ふっとんで、とてもとおくへ吹き飛ばされてしまったそうだ。


どこからともなく爆弾を担いできた男の子とが祖母の家までやってきて、数秒して爆発して、祖母はとても吹っ飛んでしまった。爆弾を担いできた男の子は山田一郎といって、あたしとよく、


山田一郎は爆発によって獅子奮迅になってしまった。

四肢がもがれ、粉塵になってしまったということだ。

かわいそうに

お経をあげよう


あたしは、山田一郎に、お経をあげた


山田一郎は、粉微塵になり、もう、人間の形をしていない。

人間の形、というのはなんだろうか、

もみじまんじゅうみたいな形のことだ。

きっと、そうだ。


粉末になったら、もうそれは人間の形ではなくって、

じゃあ、何の形かと言えば、わからなくって、


けれど、山田一郎は、爆弾を背負って祖母に突撃しちゃったから、吹っ飛んでいる祖母が流星を追い越してどこまで飛んでいった

流れ星がばらばらと地上に降り注いだ。

まるで祖母のかけらのように降り注いだ。


山田一郎は死んじゃったのだ

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