第41話 彼の力は強大だ。ランクAをすでに複数倒している。君でも勝てるとは限らない
信也は学園長室の前にまで来ていた。信也の後ろには姫宮もいる。
「失礼します」
「入りたいんですけど~」
信也はノックした後扉を開ける。姫宮も中に入る。
中には机に座る賢条と扉の前で立っていた牧野先生がいた。
「神崎さん、それに姫宮さんも何用ですか?」
「先生、俺と錬司を戦わせてくれ」
「正気ですか?」
牧野先生のするどい目が歪む。けれど信也は退かない。正面から受け止めた。
「あいつはランクAを狙っている。いや、もしかしたらアークホルダー全員だって襲いかねない。そうなったらアカデミアはお終いだ。あいつは自分こそが特別な者だと全員倒して証明しようとするに決まってる。そういう男だ。……俺が止める」
「心配は無用です。ジャッジメント事件は我々が解決します」
「戦いたいんだ、もう一度!」
「その提案を却下します」
「先生!」
けれどそれは断られてしまった。
「あなたは一度敗北しました。次はありません。この件が我々が解決します」
牧野先生の表情は相変わらず鉄のようだ。彼女の意思を覆すことなど出来るはずがない。
しかし、それで諦めるほど信也の意思はやわではない。
「悪い先生」
神崎信也は諦めない。
たとえどんな不利な状況でも。
新しい夢が胸に渦巻いているから。
信也は右手を上げた。
「俺はパラレルワールドにパスゲートをセッティング! こい、エレメント・ロード!」
「なにをするつもりですか? 止めなさい! 勝手な行動は認められませんよ!」
信也はエレメント・ロードに変身する。牧野先生からの制止の声が飛ぶが、信也は止まらなかった。
「今から特定の人物に俺の声を届かせる」
「まさか」
「聞け、錬司!」
信也は叫んだ。足元には白い魔法陣が浮かび上がり、その言葉は距離を超えて相手へと届けられる。
「もう一度俺と勝負しろ! 場所はあの時と同じだ」
信也に気後れはなかった。まっすぐな思いで言葉を発していた。
魔法陣が消える。それと同時に信也は変身を解いた。表情は満足気で後悔なんてない。
「あなたは、何故そこまで?」
すかさず牧野先生から聞かれる。
「相手はジャッジメント、ハイランクを複数倒している強敵ですよ。最悪怪我だけでは済まないかもしれないのに」
「分かってる」
「ではなぜ?」
先生からの質問に信也は答える。
「それは」
信也は一瞬考えた。何故、自分はこうまでして錬司と戦いたいのか。憧れの存在であり、一度は敗北した相手と。
それは、譲れないものがあるからだ。
かつての自分を振り返り、万感の思いを込めて信也は口を開く。
「人間の可能性を証明するためだ!」
その発言に、牧野先生ははじめて唖然とした顔になった。
それでも信也は続ける。自分の理想を。
「人間には無限の可能性があるんだ! 諦めなければ道は開けるんだよ! 俺はそれを知っている。いちいち進路に迷って、権力振りかざす同級生にいじめられて。でも、そんな俺でも出来ればさ、それが証明になるだろう? 誰でも出来るんだって!」
夢を語る信也の顔は輝いていた。
自分でもやれる。
ランクなんて関係ない。
頑張れば、諦めなければ自分でも出来るんだと。
「俺のランクはそりゃAだよ。説得力なんてないかもしれない。だけど俺は諦めない。諦めないことこそが『特別』であり、諦めないことが『可能性』なんだ! そこにランクなんて関係ない!」
錬司の暴走を止めるため。アカデミアの危機を救うため。
そして、人間の可能性を証明するために、信也は強敵、獅子王錬司と戦うのだ。
「牧野」
「はい」
信也の主張が終わった時、初めて賢条が口を開いた。
「こうなっては仕方がない、彼の提案を許可しよう」
「よし!」
「よろしいのですか?」
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決戦次元の異能学園(アークアカデミア) 奏せいや@Vtuber @helvs
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