第2話 無味乾燥な家庭

学校が終わり、家に帰るといつものように私の部屋に直行し、部屋着に着替える。


両親は共働きでこの時間帯は家にはいない。

両親はしばしば帰りが遅くなることがあり、その事が原因で昔は近所の人に「親の愛を知らないかわいそうな子」と哀れまれたことがあったが私はそうは思わない。


確かに両親と過ごす時間は短いかもしれないがそれで私が不自由になったことは無い。学校の行事にはできるだけ来てくれたし、休みの日だっていろんな所に連れていってくれた。当然、病気になったら看病もしてくれた。私にとっては自慢の両親である。


金銭面でも不自由になったことも無い。私立の学校に通えてるのもそう。趣味という趣味も無いせいか全てお小遣いの範囲で事足りるのだ。


そんなこと思いながら宿題を終わらせるといい感じの時間になっていた。そろそろ母が帰ってくる時間だ。冷蔵庫から適当な材料を取り出し、料理を始める。


いつからか家では夕食は私が作るようになっていた。初めは疲れている両親になにかしたいと考えて始めたのがきっかけだったと思う。今思えばあの時のひどい料理を美味しいと食べてくれた両親には感謝である。今ではすっかり私のルーティンの中に加わっている。


「ただいま。」


そうこうしているうちに帰ってきたようだ。


「おかえり。今料理してるからちょっとまってて。」


「分かったわ。今日は学校で何かあった?」


この会話もいつものルーティンである。不器用な母なりのコミュニケーションなのだろう。


「うーん、特に何も無かったよ。」


「そう、ならいいんだけど。何か困ったことがあったらすぐに言うのよ。今日はお父さんは遅くなるから先に食べてていいって。」


そんな他愛もない会話をしてるうちに料理が出来上がり、皿に盛って配膳する。


「「いただきます。」」


夕食中は今日どんなことがあったとか、芸能人がどうだとかそんな話をいつもしている。

夕飯を食べ終わり、後片付けをしていると母がおもむろにこう言ってきた。


「ねえ透花。あなたも学生なんだから少しくらい自由にしてもいいのよ?お母さん、あなたが潰れちゃわないか心配だわ。」


「うん、大丈夫だよ。全部私がやりたくてやってるんだからさ。」


「そう?あなたは昔から無理をする癖があるから少し心配なのだけど…、ダメな時はちゃんと言うのよ?」


今日はいつにもまして心配をされる。そんなに思い詰めたような顔をしてたのだろうか?とにかく、心配はかけないようにしないと。


そうやって他愛のない話をしながら時間は過ぎていき、『優等生』な私の1日は終わっていく。

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無色透明少女 @kanon3139

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