第2話
「んっ」
もうすぐで降ろせると意識したのかその途端ビリビリと痺れてきた両腕を踏ん張らせて鍵を持った手を持ち上げるも、いまいちこの手の鍵の開け方が解らず苦戦する。
重いー。
ボクはまだ何も考えていなかったと思う。だって、おばちゃんのボクへの呼びかけが純くんから純ちゃん、に変わっていたことにすら気付いていなかったのだから。
あ、開いてた。
どうやら鍵はいつの間にか開いていたらしい。さっきよりちょっとだけ減ったザワザワで周りが次々部屋の中へ入っていく様子が視界に映っていたからか気恥ずかしくなっていた。
ドアノブを捻ってドアを押す。
キィィと音を立てて開けた向こうは明るく、電気が点いているようで顔をあげた。
「はっ!きた――!」
そのまま、煌々とした明かりに照らされた中、目が合ったのはロフトに在った人影だった。
誰。
男の子はロフトの柵から顔を出してそれはもう嬉しそうにボクを見下しブンブンと手を振った。
少しつり目?な眸は人懐こそうに、黒髪はふわふわと無造作に。彼の人となりを表すには十分なそれらがボクを歓迎しているのは判った。
これ(入った部屋に住む自分より早く誰か他の住人…しかも異性が乱入している)が寮的な普通なのかと一瞬迷ったし疑ったし、一度部屋を出てここが自分の指定された105号室か確認もしたがそういえばそうだ、鍵は、合っているからここで開いたはずじゃないか。
となるとどうして彼はこの部屋に入れた?
あ、鍵に苦戦したけど実は鍵最初から最初だから開けっ放しだったとか?え?
この間、彼を待たせていたボク。
「オレコウキ!」
満を持したのだろう。彼は用意していたような台詞を吐いた。
「…」
この場合ボクも名乗り返すべきか。
「あ、タケナガね!」
しかし相手の言葉が続いた。向こうも向こうで苗字まで名乗った方がいいとか思ったに違いない。
けど。
待って。
「何でボクの部屋にいんの?」
言った。
感じていた、一番の疑問だ。
「はぇ?だってオマエが同室のサイオンジ?だっけ?だろ?オマエ、」
「ボク引っ越しするわ」
「今来たばっか!!」
ちょちょちょ、と引き止められてとりあえず。重い重いリュックを玄関先に置いた。あー重い。重かった。もう限界だったわ。
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