第10話
お前だけは笑っちゃいけなかったけど、待って。待とう。人の所為にしちゃいけないっておばあちゃんが言っていたから。
今のは狂った女が悪いということになる。
真っ青になってすぐ、今度は真っ赤になってモジモジし出した私の目の前から男の噴き出す声。
「ッ、あはははは!血まみれ…想像力たっか…」
「……」
この人の情報、とりあえず褒め上手だってことだけ判った。
そういえばさっきから、褒められてばかり。ショックすぎてクールダウンした頭がふと気が付く。
真顔で、ひとを褒める能力って大事と頷き初めて持つ興味。
事前に配布されていたプロフィールに目を通すと、彼は24歳だと記されていてまさかの同い年が判明。哀しいけれど私より若く見える。
衝撃的すぎた第一印象から目まぐるしく解放されて初めてちゃんと彼を見てみると、目の前でまだ幼く見える笑顔が輝いていて眩しかった。
歯並びいいなー……。
どちらかというと暖色に近い、紅茶多めのミルクティーみたいな髪色。まるで白いスーツを進んで好むようなきれいな髪だけど。
何で七三分け?
彼の笑いが静まる頃、これは突っ込んだ方がいいのだろうかと考えた。ら、彼の方から前髪に触れた。
「前髪が気になりますか。そうですよね。今日気合い入れてセットお願いしたら昨日の寝不足が堪えて眠ってしまって。目を覚ました時には完成されていたのです。この昭和感漂う前髪。いいでしょう。あ、あげませんよ」
「……。ブフッ」
「どうぞ笑ってください。けど電車の中とかめちゃくちゃ恥ずかしかったです。こういう時に限って車内ガラガラに空いていて席空きまくっているのにわざわざずっと外向いて立ち続けるくらいには、そう。恥ずかしかった」
「何分間立ちっ放しで?」
「74分間」
へ、へぇ……。
ケッコンサギ! 鳴神ハルコ @nalgamihalco
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