コーティ 5番目の次元①

※前回のあらすじ※


天文学者の青年五色ひかるは、幼馴染と同じ名前で水色の髪の不思議な女の子・愛理栖から名刺をもらう。去り際の愛理栖の意味深な言葉が暗示するかの様に、ひかるの身の回りでは母や上司が存在ごと消えていくという不思議な現象が起こる。愛理栖はひかるに何かを伝えようとしているのか、その真意はまだ不明だ。


※要約終わり※



あ~今日も疲れた~。


明日も早いし、も~うんざりしちゃう。




私は阿頼耶識あらやしき 愛理栖ありす竹馬ちくまの中学に通っている。


 今はちょっと訳あって親元を離れ、おばさんの家に寄生いそうろうしている。


 実は、私には小さい頃からずっと片思いの好きな男性がいる。


それは、ご近所のひかるお兄さんなのだ。



明日早いし、ちょっと早いけどお風呂入って寝よっかな。




あっ着信だ!




「愛理栖ちゃん今電話して大丈夫?

聞きたい事あるんだけど!」




「お兄さん?

あ、そっか!

確か、以前、兄さんが清掃活動の始まる時間に遅れた時、私が電話しましたよね?

そのときに番号覚えてたんですね」


「あ、そうだよ。

びっくりさせてごめんね」


「それは大丈夫です。

お兄さんからかけてくるなんて初めてですよね。

おや?

それにしても、今お兄さんすごく息が慌てる様ですが、どうしたんですか?」



「僕の母さんが入院してる事、君はおばさんに聞いて知っているよね?」



「入院?誰のことです?親戚のおばさんのことですか?」





「……。」





「ちょっと~。お兄さん?聞いてます?」



「ありがとう」


『プー、プー』





「お兄…さん」





——————————————————————


一方その頃、竹馬市内某アパート




僕はこの日仕事を早退し、


帰宅途中に母の病院に寄ったのだが……。


病院の受付で食い下がる僕の姿が周りの人達には不審者としてみえたらしく


病室に入れないどころか、危うく通報されそうな事態となった。


その後僕はしぶしぶ家路につき、ずっと考え事をしていた。





やっぱりどう考えても変だ。母さんが消えて存在しない事になってる。


冗談じゃない。




”消える?”




ふっと脳裏のうりにあの不思議な女の子の姿がよぎった。




『信じて!あなたが消えちゃうその前に…』




「そうだ!」


確か、もらった名刺があったっけ。


 さっき電話した時に本人に聞けばよかったな。


名刺の裏には場所と時間が書かれていた。




宇宙クラブ


次回日程 4月24日(日) 18時より




これって、今日じゃないか。しかも後1時間も無い。


場所はなになに?長野駅近くの廃ビルか。


よし、すぐに行ってみよう。


僕は、獲物を狙う鷹たかのように真っ直ぐに廃ビルを目指した。


後になって思えば、

それが運命の分かれ道だったんだと思う。



※今回のあらすじ※


愛理栖は近所に住む年上のひかるに片思いをしている。


ひかるは、病気の母親が存在自体消えてなくなるという不可解な事態に遭遇する。

また、彼は目の前の事態に対してある既視感を感じていた。

宇宙クラブという謎の団体に関係する女の子愛理栖が言っていた意味深な台詞を思い出したのだ。

ひかるは妙な胸騒ぎを感じつつも、

藁をもすがる思いで名刺に書かれた愛理栖の待つ廃ビルへと急いだ。

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星屑彼方の君とあの夏の旅 憮然野郎 @buzenguy

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