第18話 甘露な怠惰は糖分過多

「ハァ…全く…遅いねぇ…」


ぼやくメーヴルの前に煉達が転移してくる…


「ううっ…何だか気持ち悪いニャ…」


「…海底から一気に出てきたからね…」


「おや…やっと帰ってきたのか…見慣れない奴まで連れてきてるみたいだが…」


「…マリネアよ、あなたと同じ大罪人…」


「……なるほど…通りで、セドナに似てる訳だ…

それにしても…生きてたんだな。」


「なんだっていいだろ!腹が減ったんだ!帰って飯だ!」


「ええ…」

 

一行はルフティへと帰った…


「して…傲慢の者は消え去ったと…」


「あぁ…ようやく終わったよ。そんじゃあ…古代文字の解読は頼んだよ…この言語の記録はここ以外残ってないだろうからね…」


玉座にて報告を終えたメーヴルが戻って来た…


「さて…報告が終わった…よ…」


「はぐっ…!もがもが…!うまうま…」


煉は宴の席で暴食の限りを尽くしており、山の様な果実や野菜料理があっという間に消えていく…


「…いくらなんでも食いすぎでは?よいのか?

エルフは少食だと聞くが…さすがに…」


そんなセドナに、コレットが答える…


「森の空気と魔力だけで殆どお腹になるから…

食料は基本来客や産まれたての子供しか食べないから、保存するだけで食べないよりこうして食べて

欲しいですよ。」


「な、なるほど…」


「それに、あんな美味しそうに食べてるのは珍しいですよ?あれは好みの分かれる味がなので…」


「…大罪で欲望の方向性が歪んだとは思えない…」


そんな会話を聞きもせず煉は食べている…


「噛めば噛むほど広がるドライフルーツの甘みと

酸味にコリコリとした食感が合わさって最高だ!

ぱりぱりとした漬物の塩味が故郷の味を思い出す!口に広がる度に米が欲しくなる美味さだ!」


「ほら、あんなふうに言われたらウチの老人達は

嬉しくなっちゃってね。」


そうして腹の殆どを満たした煉は至福の表情だった…


「ありがとう…最高だった…お礼といっちゃ

なんだけどこれを…」


「ん?あ!?アイツまさか!?」


またもや角をぺきっと折ってエルフ達に差し出す…


「ぬわああ!?またやってる!?」


「えええ!?よ、よろしいので!?」


「うん、別に私は無くても困らないし…貰うと皆が嬉しそうにしてるからね!」


驚愕するエルフ達に煉の角が与えられた…食事を終えた煉は寝始めた…


「寝たのか…赤子みたいにグースカ寝よって…」


「寝姿はまるで小さい頃のセドナみたいね…」


「…それ詳しく知りたいのだけれど…!」


「やめろ、母さん…キーケもだ!」


─────────


「チッ…マリネアめ…容易く絆されおって…儂の

永遠の怠惰が潰える可能性を摘む為にわざわざ

頭を働かせておるというのに…!ティエルスフが

まだ生きていたことでキニアスフも消えた…!

儂一人で成さねばならんのか…!面倒な…

かくなる上は…」


────────────


「……ウゥ…?」


体を起こそうとするが、凄まじい怠さが煉の身体に

のしかかる…


(なんだこりゃあ…食いすぎたかな…?)


しかし、重い瞼を開けて周りを見る。

皆が地面に突っ伏してだらだらとしている…

日常の様でどこか異様なその光景に目が覚める…


「え?え!?何!?大丈夫かよ!」


倒れているのは一般人達の様だ…大罪の力を持つ者だけが辛うじて立っていた…


「これは…どうなってんの?」


「知らん…倦怠感で体も頭も働かん状態だ…」


「動けるのは私達だけ…一体原因は…」


「症状から見ても怠惰の大罪人が原因じゃ…」


「は?怠惰?」


「え?知らないの?サルミアの事だよ?緑色の

ナマケモノだよ?」


「知らないよ!というかお前は何で知ってる事を

言わない!?」


「メーヴル達がルフティに行った事とか知ってたから知り合いなのかなって…メーヴルは長生きで何で知ってると思ってたもんでね。」


「…この馬鹿は…!まあいい…!緑色のナマケモノだな!皆で手分けして…」


[無駄じゃよ…]


「!?」


[…こうなるくらいなら…自分でやっていれば

良かったのう…まあ、怠惰にしていたツケが回ってきたからな…手段は選ばん。]


「何をゴチャゴチャと…!」


[龍の童よ、全ての大罪を持って儂の元へ来い…

この世界の終わりが来る前にな…]


……皆の視線が私に集まる


「…今の話が真実なら…お前を信用出来ん…突如表れた大罪の主私達を外に連れ出すなん…お前自身がそんな悪意を持つことは無いとは思う…が…」


「まぁ…そりゃそうよね…」


「…それに、奴の元に行かなくとも私達を無力化

出来ただろう…なのにわざわざ私達を呼ぶなんて

真似したんだ…罠に決まっているよ…」


「まぁ…結局終わるんなら華々しく散る方が良くない?」


「…本当に呆れた奴だよ…だが、他に方法がないのは確かだ…そんな考え無しのお前に私達は助けられたのだ…こうなれば…最後までついていこう。」


「全く…アホは煉はだけだと思ってたが…私も同じ

穴の狢か…もう年だねぇ…」


「さぁ…行こうか!」


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転生龍は食べ盛り! ハトサンダル @kurukku-poppo

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