第11話

思わず後退り。


今度は俺が腕で顔を隠す始末。


覗いた双眼で彼女を見下ろすと、ぼうっと俺を見上げる。



と、いうか。



酔って無意識でこっちの、うちの方に寄ったってこと?




「何ですかそれ……」


「?」




可愛過ぎる。




「はなぶきさ…ぁ、また髪拭いてないじゃ」


「……」



玄関先で靴も脱がず両手を伸ばす宇乃さん。



「……宇乃さん」



俺はそれに一歩、理性の揺らぐ一歩を踏み出す。



「帰る…なら、今しかないけど」




悪い予感がする。



頭では酔っている相手だって理解している筈なのに、きっと彼女相手じゃその理解も歯が立たない。




返事のない目の前に、そっと俯かせていた顔を上げる。



宇乃さんは目が合うとただ、何もわかっていない顔でふにゃりと。微笑む。





ああ。





何で、こんなに。





愛おしいのだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

悶えても顔を覆わないで(語恋番外編2) 鳴神ハルコ @nalgamihalco

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

同じコレクションの次の小説