第2話 魔女の目覚め
「天使を殺して下さい」
そう私の耳元にか細く優しく囁いた若い女の声。
私は天使を殺せと命令してきた女の姿を見ようと目を開ける。
すぐさま、私の目に映ったのは自分自身の胸部が、体が薄く柔らかで透けている布の服と金の装飾品を身につけていることだった。半裸というよりほぼ裸同然だ。
そして、私の胸に剣が刺さっている。私の胸に刺さっている剣は薄闇の少ない光を集めて光を射している。
私はどうやら殺されたようだ。剣で殺されたのだ。
ならなぜ、私は死んだはずなのに目を開けることが出来るのだろうか。
誰かは知らない声が聞こえたのか。
理はあるのだ。だが、今の私には思い出せない。
思い出せることは一つ、私が魔女だということ言う事だけだ。
私は私に向かって命令してきた声の主を一目見ようとためしに頭を動かそうとした。首を少しひねられるかどうか動かそうとしたが動けなかった。
起き上がれず、手も足も動かせられえなかった。動かせられなかった。動かせられたのは目の動き、視線だけだった。私の視界の見える範囲内ではまず見えるのは自身の胸に刺さっている剣に横目で見ると布の入った箱に自分が入れられている事に、さらに布の入った箱の外側には、赤い花、バラの花が咲き乱れ、その花びらが私の入っていて血のように飾られている。花びらは赤く吹き溜まりを作っている。
赤い花の向こうの壁には鏡がいくつも飾られていて、形は姿見のように縦に長くした六角形の形をしている。それがいくつも壁に飾られている。
目をまっすぐ、仰向けのままに見える上の方の様子を見る。天井には白いカーテンとソロバン型の大粒のガラスのビーズが通った紐でいくつも飾られえている。
私を包み込むようだった。ここまでが私が見たものだ。
残念ながら、この私に命令してきた声の主、女の姿を見ることはできなかった。
私の空耳なのかもしれない。私はまた、目をつむった。安らかに眠るために。
二度も目を開けることがないように祈った。だが、また女の声が聞こえた。
「心の臓を求めよ」囁いた。私に。
囁かれた同時に胸から剣を引き抜かれたのような感覚があった。
痛くない。
あるのは冷たい異物感が痕を残す。
さらに女は囁く。
「魔女に慈悲の剣を」
声が聞こえたのはそれっきりで後は静まり返った暗闇だけとなった。
Misericorde・Red Opium Rose Louiscoma @l0uisc0ma
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