2話 異世界のくせにじゃが芋がある
リィザと
赤毛に鮮やかな緑色の瞳をしていても、紗菜と認識してしまうあたり、ひょっとすると姿かたちから違うのかもしれない。
異世界の我々にあたる存在を、勝手に
「式、ねぇ」
「お嬢様……
本当にお忘れになったのですか?」
「……そういうことになるわね」
リィザと入れ替わったわたしの姿は彼女のものへと変わったが、記憶までは引き継がれなかった。今のわたしは記憶喪失ということになっている。
「本当に、上手く行かないものだ」
無機質な円柱形の街並みから帰還した自宅は、豪邸と言っても差し支えない。
外観こそやはり有名デザイナーが担当しました、と言わんばかりの変わったものだったが、内装は――まるでどこかの宮殿にでもいる気分である。
「シロガネだっけ、婚約者」
「シロガネ・リュウシィン様ですよ……
なんで忘れてるのよ。ああ、不安だわ」
「聞こえてるからな」
リィザには婚約者がいるが、どうやら仲はあまり良くないようだ。
彼女の日記を翻訳しながら読む限り、シロガネはこの国における貴族――それどころか王族にあたる人間だそうで、婚約者であるリィザの地位が高いことが伺える。
現国王には跡取りがまだおらず、王弟の息子であるシロガネを次の王に推す声もあるという。
「トキノミヤコ王国、ねえ」
「リィザ様……大丈夫?」
「憐れむな。お前ちょいちょい雑だな」
東京タワーもない、スカイツリーもない。
高くそびえる、遠くに見える塔はお城らしい。
「で……式ってなんの?」
「ああもう!
王立魔術学院への入学式ですよ!」
「そっち? 結婚式とかじゃなくて良かった!」
「それは卒業後の話です!
シロガネ様もご一緒に入学されるんですから、しっかり仲を深めて下さいませ!」
食べ物やら、聞き覚えのある単語があるくせに――少しだけ似ているくせに、魔法がある世界。
「やっぱり、似ているって
「……お嬢様はお嬢様ですよ」
「じゃが芋は
「あたし今、じゃがいも扱いされました?」
異世界のくせにじゃが芋がある。
おおかた、転移者が持ち込んでそのまま定着したのだろう。
黒スーツの男曰く、お互いの世界が干渉して、どこぞの誰かが迷い込むなんてしょっちゅうあるそうだ。
それから、ある程度文明レベルが近いだとか、時空の階層――とスーツの男は言っていた――が近いと、自然と似てくるらしい。
なんだよそれ。
「……カニ化、かな」
「お嬢様?」
私が悪役!?愛されると思うなですって!? 感謝ッ!自由ッ!!謳歌ッ!! と思ったら溺愛しやがって何が何でも逃げてやる!! 異世界転移令嬢のやり直し Bom-🧠寺 @bombrainbom
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