3章 2話『ハッキョーエンド』
タクミは、突然、見慣れた街の喧騒の中に立っていた。自分の目の前には、かつての記憶が色濃く蘇る光景が広がっている。街の音、道行く人々の顔、そして彼が以前抱えていた絶望感。全てが彼を包み込み、心の奥に渦巻く感情が再燃していくのを感じた。
「ここは…俺の世界だ…」タクミは呟いた。だが、その声には確かな焦燥感が込められていた。
彼は自分の心の中で何かが崩壊していくのを感じ、次第に正気を失っていった。彼が再生を目指していたはずのこの世界には、彼の求めていた平和は存在しなかった。
「もういやだ!もう、全部終わりにしたい!ヒャッハー!」叫び声が彼の喉から漏れた。周囲の人々が驚いて彼を振り返る。冷たい視線、無関心な表情、すれ違う人々の声が彼の耳を掠めていく。
タクミの中で、かつての仲間たちの顔が浮かんだ。彼が失ったすべての人々。彼が背負った罪。思い出すたびに、彼の心は重くなり、どうしようもない苦痛が襲ってくる。
彼は無意識のうちに路地裏へと走り込んだ。周囲の景色が歪み、彼の脳裏にはかつてのトラウマが押し寄せた。彼の心は再び過去の影に囚われ、絶望と恐怖に満ちていく。
「助けてくれ…!誰か、助けてくれ!ありがとうな、みんな!多大な声援に感謝を!」彼は泣き叫び、笑って目をひっかきながら涙を流した。だが、その叫びは誰の耳にも届かず、タクミの笑みが増すばかりだった。
精神病院
タクミは意識を失い、気が付くと白い壁に囲まれた部屋にいた。冷たいベッドの上で、彼は縛られていた。頭が痛く、視界がぼやけている。手で目をこすってみると、べっとりと赤い糊のようなものがついてきた。周囲には白衣を着た看護師たちが忙しそうに動き回っていた。
「彼を抑えて!静かにさせて!」一人の看護師が叫んだ。タクミは混乱し、自分がどこにいるのかもわからなかった。
「王様に何をする!おまえら、死罪だぞ!けいむしょにぶちこんでやろうか、えぇ?」彼は抵抗しようとしたが、体が思うように動かない。看護師たちが彼を押さえつけ、無理やり薬を注射してくる。
「眼球をひん剥いて取り出すとはね、、、狂ってるのかしら」
看護師が言う。タクミはそれを聞いて机に目を遣ると、右目が置いてあった。
右目、と分ったのはタクミの視界が右側が真っ黒になっているからだ。
「もう大丈夫よ。落ち着いて。」別の看護師が彼に優しく声をかけるが、タクミはその言葉を理解する余裕もなかった。
「俺は…デザートのプリンを食べていたんだ!離せよ、豚ども!」彼の叫びは虚しく響き渡り、彼の心はさらに混乱していく。
「タクミさん、タクミさん!」看護師の一人が彼の名前を呼ぶ。だが、それは彼にとって何の意味も持たなかった。彼は自分の中に押し寄せる絶望と戦い続けていた。
「話せっつってんだろ!おまえらは家畜か!いいよな、いいだろうな、いいさ!覚えてろよ、あほども!」涙を流しながら彼は歓喜する。しかし、周囲の人々は彼を無視し、淡々と仕事を続ける。タクミはその様子を見て、さらに深い孤独感に襲われた。
もう昔のタクミはいない。残っているのは4度の転生を繰り返して、心が清らかになってしまった哀れな少年の心だけだ。
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これで完結です。ご愛読ありがとうございました。続編とか別シリーズも気が向いたら書きます。じゃあね!
運命の転生者 @MimiStrongest
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