魔法のクッキーと時間旅行
@kunimitu0801
魔法のクッキーと時間旅行
美咲は、学校の廊下を歩きながら心の中でため息をついた。新学期が始まってまだあまり日が経っていないが、クラスメイトたちの輪の中に入ることができず、いつも一人ぼっちだった。料理部は入ったものの、部員たちと打ち解けるのは簡単ではなかった。
「もっと積極的にならないと……」と、心の中で呟く美咲。料理が得意で、自分の得意分野で友達を作りたいと思っていたのに、なかなかうまくいかない。
そんなある日、放課後の部室で、美咲は古びたレシピ本を見つけた。埃をかぶったその本には、「魔法のクッキー」の作り方が載っていた。そのクッキーを食べた者は、過去の出来事を体験できると書かれている。
「本当にそんなことができるのかな?」美咲は半信半疑になりながらも、興味をそそられた。彼女はそのままレシピを写し取ることにした。
数日後、美咲は部室に戻り、材料を揃え始めた。小麦粉、砂糖、バター、そして特別なスパイス。手順を間違えないように慎重に進め、やっとのことでクッキーが焼き上がった。ふわっと香ばしい香りが部室に広がり、美咲は思わず微笑んだ。
「これが本当に魔法のクッキーだったら、過去に戻れるのかもしれない……」
彼女はクッキーを一口食べた。甘さが口の中に広がり、心地よい幸福感が彼女を包む。その瞬間、視界がぐにゃりと歪み、気がつくと美咲は小学校の教室に立っていた。周囲には懐かしい友達の姿があった。
「美咲!遊びに来て!」と、元気な声がした。振り向くと、昔の友達、ゆうなが手を振っている。
「え、私、ここにいるの?」美咲は驚きながらも、思わず彼女の元へ駆け寄った。心の底からの嬉しさが込み上げてくる。教室では、彼女たちが楽しそうに遊んでいた。
美咲は、過去の出来事を目の当たりにしながら、自分がどれほど楽しい思い出を持っていたかを再確認する。友達と一緒にお菓子を作ったり、運動会で競争したり、笑い合った日々が次々と蘇ってきた。
「今の私、もっと友達を大切にしなきゃ……」美咲は心の中で強く思った。
その後、彼女は自分が当時の自分にアドバイスをすることにした。休み時間、教室の片隅で一人ぼっちでいる小さな自分を見つけて、優しく声をかける。
「一緒に遊びたいって言ってみて!きっと友達ができるよ!そう伝えると、過去の自分は目を輝かせて頷いた。
その瞬間、光が彼女を包み込み、再び視界が歪んだ。美咲は元の部室に戻っていた。クッキーの残骸が目の前にあり、心が温かくなった。
「私は、もっと積極的にならなきゃ……」
新しく決意を抱いた美咲は、次の日の放課後、料理部の仲間たちに自分の作ったクッキーを振る舞うことにした。「これ、みんなで食べようよ!」と、彼女は明るく声をかけた。
最初は驚いた様子の部員たちも、次第に笑顔になり、和やかな雰囲気が広がっていった。美咲は、自分の心が少しずつ開かれていくのを感じた。友達ができる喜び、共に料理を楽しむ幸せが、彼女の心を満たしていく。
「このクッキー、魔法がかかってるかもね!と、部員の一人が笑った。美咲はその言葉に頷きながら、心の中で思った。
「私の魔法は、友達との時間なのかもしれない」
料理部は、次第に活気に満ち、仲間との絆が深まっていった。美咲は、過去の自分に感謝しながら、未来に向かって自信を持って進んでいくことを決意した。
そして、彼女は再びクッキーを作ることを考えた。今度は、みんなで一緒に作ることができる。その瞬間、美咲は笑顔を浮かべた。
「新しい魔法のクッキーを作るんだ!
彼女は、これからも仲間と共に楽しい思い出を積み重ねていくことを誓った。
魔法のクッキーと時間旅行 @kunimitu0801
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