第3話 母と娘、意外な行動力

子猫には「ノノ」と名付けようと思った。


「なんか呼びにくいね。」

不評だった。

「じゃあ・・・ノノ・・・リリ?」

不評だった。

「バスターマシン7号・・・」

「意味わからん。」

もっと不評だった。


子猫の名前は「ノノリリ・バスターマシン7号」で一旦保留された。


翌日、猫用のケージを購入し、子猫はそこで暮らすことになった。

ニャーニャー出してくれとうるさいが、まだ引き取ったばかりで感染病の検査なども済ましておらず、念の為に隔離したままにしていた。


「ほう、また犬を飼うのか?」

義父はそういった。

「いや、これ子猫です・・・。」

「なに!猫はいかん!返してこい!」

「いや、もう引き取ったから無理です。」

「そうか。でも猫か。猫はいかんな。猫はいかん・・・・」

なにか言いたそうだったが、口を濁したまま義父は立ち去った。

なにやら今後が不安になったのだが、とりあえずは有耶無耶にした。

後に義父が猫を嫌がる理由を知ることになるのだが、それは別の機会に。


一方、妻と娘は食卓テーブルでスマートフォンの画面を見てなにか相談をしている。

「動物愛護センターの子はもう引き取られたって。」

「やっぱり・・・。平日に行けないのは不利だね。」

「〇〇市(ふた山向こうにある市)の保健所に保護されてるって!」

「どんなの?黒?茶色って書いてあるね。」


もともとは犬好きの家族。

なので彼女らは前々から子犬を欲しがっていた。

今も動物愛護センターのサイトを見ながらああだこうだと話し合っている。

しかし悲しいかな自治体の運営する施設は平日に引き取りに行く必要がある。

しかも早いもの勝ち。

今までずっと出遅れてチャンスを逃していたのだった。


そんなタイミングで我が家には子猫が転がり込んできた。

犬好きの家族ではあるが、子猫への反応も上々であった。

ようは動物好きと言うことなんだろう。

思えば、インコ、ハムスター、金魚、カブトムシ、もちろん犬も。

考えればいろいろなペットが我が家にはいた。

であるから、今回は納得してノノリリ・バスターマシン7号を可愛がってくれるだろう。

などと母娘の会話を聞きながら、私はケージの子猫がキャットフードを食べるのを眺めていた。


翌月曜日、会社で仕事をしていると、

「今、〇〇市の保健所から子犬を引き取って来たから。ケージをあなたの部屋においても良い?」

と、妻から電話がかかってきた。

「どゆこと?」

「娘と一緒に〇〇市の保健所に行ってきた。今ホームセンターに来てる。子犬のケージを買って帰るから。(キャンキャンキャン!)」

電話の後ろで子犬の鳴く声が聞こえた。

「え?聞いてないんだけど・・・」

「だって、決めないとまた他の人にもらわれてしまうじゃない?」

〇〇市までは結構な距離がある。

先日の日曜日にインターネットで子犬の写真を見て母娘で盛り上がったらしく、実物も見たくなったらしい。

なので二人は仕事の有給を取り、〇〇市まで行ってきたと言う。

保健所で実際に見た子犬は可愛く、また悩んでいたらチャンスを失う。

それは嫌だ。

と、言うわけで・・・

あっという間の決断で子犬を引き取ってきたのだった。

そしてケージの置き場も独断で有無を言わせず。

私が帰宅すると、人も入れそうなサイズのケージは問答無用で私の部屋にあった。

ケージに入れてかまってやらないとキャンキャンキャンと子犬が訴える。

ここを開けろ、俺は無実だとでも言いたいのか。


我が家は突然にぎやかになった。

今回は思いがけない行動力を見せた母娘だった。

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猫が西むきゃ犬が噛む オッサン @ossane

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