第7話 孤児院



「完全にいなくなってる……」


 すぐに窓から顔出し辺りを見渡すがデザイアの姿はもうどこにもない。

 

「とりあえず良かったじゃない。デザイアもクリスタル集めの参加を認めてくれて。それに魔具も貰えたんだし」


「魔具? 魔法具のことか?」


 道具に魔法をかけ本来ではできない使い方を編み出せる魔法具。魔具と略されることはなかったはずだが……


「魔法具とは違う、魔王が作った武器のことよ。特徴としてはクリスタルを使って必殺技を放てることかしらね。まぁ使い方は明日から教えるから」


 時刻は陽が沈み日付が変わる頃。寝不足になっては明日からの活動に支障も出る。俺とミーアはとりあえず今日は寝ることにして明日に備える。


 それにしてもクリスタルか……


 一人になり面白みもない天井を見つめ今日あったあまりにも多い情報を脳内で整理する。

 とはいったものの単純な俺の頭の中で結論が変わることはない。どんな危険があろうと、より多くの人を助けられる力を得れるならミーアに協力する。

 結局は並び替えを少しするだけに済ませ俺は目を閉じ意識を眠りへと沈ませるのだった。



☆☆☆



「リュージ? 起きてるかしら?」


 翌朝。窓を開け日光を浴びていると扉の向こうからノックとミーアの声が聞こえてくる。


「起きてるよ」


「あっ、おはようリュージ。ここの一階で朝食が出てるから食べに行きましょう」


「すぐに準備して行くから先に行ってて」


 ミーアが一階に降りて行った一分後くらいに俺も下に降り食事スペースで彼女の姿を見つける。


「早かったわね。もう頼んでおいたわよ」


「ありがとう。それで今日は何をする予定なの?」


「とりあえずはクリスタルを探すための情報収集ね。冒険者ギルドで話を聞いたりとかかしら?」


「そうか……ちょっと午前中時間を貰えないかな? 俺が育った孤児院に行きたいんだけど……」


 ここで料理が運ばれてきてそこからは料理を食べながらの話となる。 

 

「孤児院? あなた孤児院育ちだったの?」


「うん。物心ついた時から親がいなくて孤児院に拾われたんだ。多分ミーアと同じでいざこざに巻き込まれたんだと思う」


 だから俺はこの世界での親の顔を知らないし、言葉だって孤児院にある本から独学で学んだ。


「そう……あなたも大変だったのね」


 同じ境遇の俺を見て同情してくれたのか、悲しげな瞳のまま野菜の入ったスープを飲み干す。

 俺はパンとスープを口に入れ、食事を終えた俺達は早速孤児院へと向かう。


「本当について来るのか? あそこ別に何もないぞ?」


「私とリュージはもうパーティーなんだからお互いのことをもっとよく知らないといけないし、これから命を預け合うことになるからね」


「そう……だな」


 命を預け合う。パーティーでやる以上それくらいの信頼関係は必須だ。だがバニスのパーティーに居た頃の記憶が脳裏をよぎる。

 弱いお前なんかに任せてられない。下がってろと俺を殴るバニス。情けないと嫌々傷を治すシアに無様な様子を見て嘲笑うデンリ。そして何も言わないものの軽蔑の視線を送り溜息だけ吐くトッポ。

 とてもじゃないが前居たパーティーではそのような信頼関係は抱けていなかった。


「何暗い顔してるのよ?」


「いや……前居たパーティーだとそういう信頼関係はあまり築けなかったから心配になって……」


「大丈夫よ。きっとリュージと私なら信頼関係を築けるわよ」


 根拠ない自信だが今はそれがありがたい。傷のついた心が癒される。

 

 そうだよな……いくら失敗したってまた一から始めればいいんだ。だから今度はミーアと一緒に……


 数十分もすれば孤児院に着き、子供達の何人かが俺を見るなり駆け寄ってくる。

 

「わぁ! リュージだ!」


「ねぇねぇまた一緒に遊んでよ!」


 子供達は混じりものが一切ない笑顔を見せてくれる。


「おやおやこれはリュージくん。お久しぶりですね」

  

 子供達と戯れていると俺の育ての親であるこの施設の院長が笑顔で歩いてくるのだった。

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なぁ、無能だと追放された俺が実はクリスタルを自由自在に扱える最強の力の持ち主だったのだが? ニゲル @bbrda

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