最終話
「さて、ハヤト、今回は――」
ああ、まただ。神様の声が聞こえてくる。答えは決まっている。
「今度、持っていくのはDVDだ!」
歴史の教科書には戦国時代に独自の進化を遂げたテレビがあったと書かれていた。戦国時代の戦のDVDを持っていって見せれば、戦の仕方を思い出すに違いない。歴史好きではないけれども、戦国武将がゲームで決着をつけるなんて、ナンセンスだ。俺が奴らの目を覚ましてやる!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「信長様、例の奴が再び現れました」と家臣が告げると、信長はにっこりと笑っている。なんか、信長の笑顔を見ると、逆に怖くなるんだが。
「それで、今回は何を持ってきた?」
「DVDというものです。これを見れば、戦がどのように進行するか、視覚的に分かります!」
「戦? シュミレーションゲームで十分ではないか」
「そうかもしれませんが、戦をした方が手っ取り早く領土を得られます。これは、浅井長政があなたを裏切った時の話を視覚化したものです」
「浅井が裏切る? そんなバカな。あいつにはお市を嫁がせている。それはないはずだ」
「まあ、これを見てくださいよ」
DVDを見た後、信長は呆然としていた。まあ、予想通りの展開だ。すると、何か閃いたらしい。今度は何をする気だ?
「ハヤト、今回はここまでじゃよ」
おい、神さま! こんないいところで、現代に戻すのかよ! そうツッコむと同時に、あたりがぐるんぐるんと周り出す。頼む、歴史の教科書がまともになっていますように。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
俺は現代に戻ると、早速歴史の教科書を開こうとする。しかし、表紙が何やらおかしい。そこには「名監督徳川家康」だの「織田信長、最高傑作賞を受賞」などと書かれている。中を開くと「戦国時代には映像を撮るのが流行し、各武将は映像を撮るために、模擬戦を行いました」と説明されていた。
ああ、どうやら今回も失敗したらしい。歴史オタクではないものの、歴史を修正できなかったことに苛立ちを覚える。俺は歴史の教科書を投げ捨てた。エンタメ雑誌になった歴史の教科書を。
戦国時代に何か一つを持っていくなら何にしますか? 雨宮 徹@n回目の殺人🍑 @AmemiyaTooru1993
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。