第35話 開演

「てちかちとにくちしらのなとんちみらのにらのなみにみらのらすにかちに。とらとにかい「んらみしいのなすいかいちすにきちからな」と伝えたい」

 トウモロコシは願いを伝える。

「なるほど。そう考えるのか」

「ギンは違うの?」

「私にあるのは怒りだ。せめて私が、とんなまにみのらな ならそういうものだと受け入れられた。でも違う。今でこそ視線を感じるから、もらみらきちかちすに が始まっていると分かる。だがこの10数年、ずっと虚無の中で生きていた。しらのなとんちんちとちのなとんちみに感謝など、感じない」

「10数年か。確かにそれだけ生きていれば、私もそうなっていたかもしれない。そりゃ、怒りも感じるよね」

「まあ、安心しなよ。君の願いには協力する。唯一の仲間だからな」

「かたじけない」

「で、何か考えはあるのか?」

「今、この舞台ではモトトク教という宗教が流行っているらしい」

「その宗教に便乗しようってことか」

「そうだ。私たちで宗教を設立して、宗教戦争を起こそうと思う」

「フッ。よりにもよって、私たちが神みたいな存在になるのか。なんちゅう皮肉だよ」

「舞台は皮肉が効いてる方が面白いものだよ」

「違いねぇ」

 2人は創設する宗教を考えた。


 モトトク教の教会から出てくる信者にトウモロコシは声をかける。

「ちょっといいですか?」

「何でしょうか?」

「私、モトトク教の教義について質問があるんですけど……」

「俺に答えられることなら、何でも聞いてください」

「ああ、よかった。ではお聞きします。モトトク教では、お金を稼ぐことは良くないこととして教わりますよね。あれ、可笑しくありませんか? 我々は現実に生きていて、そのためにはお金が必要不可欠です。それなのにお金を稼ぐことを避けるのは変ですよ」

「少し勘違いされているようですね。お金を稼ぐことが悪なのではなく、お金のために道を外れることを悪としているのです」

「そうなんですね。なら教会はどうなのでしょう」

「?」

「免罪符とやらで教会はお金稼ぎしてますよね?」

「それは違います。あれはお金稼ぎではなく、救済を目的として売られているものです」

「だったら尚更、お金を払わないといけないのは変ですよ。あれじゃあ、貧乏人は救われないみたいじゃないですか」

「それは……」

「でもアヤモ教では違います。お金持ちはそうでない人に施しを与えることが教義にあります。詳しく話したいので、ちょっとウチに来てくれませんか?」


 1時間後。

「アヤモ教に改宗します」

「ありがとうございます。布教お願いしますね」

「はい!」

 男は事務所を出た。

「ギン。やっぱ君も洗脳出来たんだね」

「私たちの基本性能でしょ」

「そうだね。さあ、暴れようか。オーディエンスのために。私たちのために」

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真実は手紙と共に 小鳥遊 怜那 @825627473462

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