リサ 20歳(6)

(筆者に対して)なんか、あんまり気をつかわないでほしい。

――いや、気は使ってないですよ。

 友達っていえば、そうだ。ずっと私立だったっていうのもあって……高校の時も、私立の子(高校の友達)と公立の子(地元の中学時代の友達)と遊びにいくのでだいぶ金の使い方違うんですよ。ほんとに額が変わってくる。それを毎回毎回誘われてたら……。普通の生活ではない。

――遊ぶ場所も変わってきますか。

 長崎なんでどこもないですよ。ショッピングモール二つくらいしかないんで。ご飯食べに行く場所とかは違う。中高生レベルじゃない。

――そういうところで劣等感を?

 うん……。劣等感っていうか、例えば、お父さんが普通にリサにお金をくれてたら、お小遣いとか。バイトとかもできなかったから、中高生のときは。同じ生活だから、その前に同じこと考えたら、普通にお父さんの年収だったらまあまあいい生活できたと思うんですよ。そこで、うん、思ったより少ないなって。

――葛藤がありますか。

 なんでそんなにケチなのかな。今でも不思議に思う。物心ついたときにはもう、親が仲悪かったんで。親同士がしゃべってるの見たの、いつだろう、最後。

――ごはん一緒に食べるというのもないんですか。

 ないですね。時間が合わない。学校の先生だから、単身赴任。スケジュールが多くて、出張みたいな。長崎、島が多いんで、お父さんだけ島に転勤、みたいな。あっ、なんか追加で食べます?

――検討します。

 遣唐使(笑)

――え?(笑)

 バイトとかで電話とったときに「いま席空いてますか」って聞いてきて「空いてますよ」って言ってるのに「ちょっと考えますね」とか言って、空いてるって言ってんだろみたいな。うちらってそういう考え中の人のことを遣唐使って呼んでます。検討している人だから遣唐使(笑) 。はい、遣唐使、みたいな。めっちゃ圧強いお客さんだったら、「めっちゃ高圧人間やん(笑)」って裏で言ってる。

――楽しそうだな。ノリが。

 うちの人、みんなね(笑) 。例えば、めっちゃおっぱい大きいお客さんがいたとします。それだったらお客様マークのところに麻布百景って書く(笑)。麻布の夜みたいに美しい女性って意味。

――いや、面白くない(笑)。

 とにかくめっちゃ、仲良かったんですよ。前は。でも前の忘年会で、社員のせいで、もうそういうノリなくなっちゃった。戻れよ、自分の店舗に。

――前にアプリで会った二人の話、もっかい聞いていいですか。

 一人は、自分の仕事の話とか、なんか昔は中国で何か仕事してたらしいです。その時の話を聞きました。けっこうおじさんでした。50歳。そんなんばっかですよ。たまに70代とかもいる。

――親子ほど離れてますね。どんなやりとりをしたんですか。

 ラインとかのやり取りも、何言ってるのか……。あんまりかみ合わない。会ったときはそんなに違和感なかったけど。会ってみたら普通の会話するし。どこに就職するの、とか言われて。詳しい会社名は言わなかったけど。

――すごくお金持ってそうなおじさんって感じの人はいない?

 いやでも、年収3億円以上、の人とかいますよ。

――会わないんですか?

 会いましょう、ってなったんですけど、結構忙しいみたいで。

――たぶん、社長とか、実業家とか、そのクラスだろうね。


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若者の生活史 西村たとえ @nishimura_tatoe

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