第8話

「……かのこ」


 教室の入り口から入ってきたのは、親友の戸山とやまかのこだ。


 いつだったか、かのこは里大のことを好きかもしれないと話していたことがあった。


 それをなんとなく聞き流して、自分の気持ちは親友である彼女にも言ったことはない。


 それを今このタイミングで知られてしまった。


 怒りに満ちた彼女の視線から逃げられず、里大から離れた。


 好きだと言われた。


 里大も私のことを好きだと……。


 すごく嬉しいのに、親友にずっと嘘をついてきたその事実が私を打ちのめす。


 かのこが私へと近づき、もう一度同じ言葉を言った。


 「青羽、今、里大くんになに言ってたの?」


 「かのこ……わたし、」


 俯き、うまく喋れない私の前に、怒った顔をした親友と、その成り行きを不安げに見守る好きな人がいる。


 私はどうしたらいいんだろう?


 どうするのが正解なんだろう?


 私は、どうしたいんだろう……。


 どちらの選択をしても、私は大事な人を失う気がして絶望に包まれた。


 でも、私は……。


 たった一つ本当に手に入れたいもののために、もう嘘をつく気はないんだ。












完結

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その瞳が語るもの 真弥 @09013562894

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