第7話

目に涙を溜めた青羽の口から告げられた言葉に、俺は息をのんだ。


 え?今、なんて言った?


 もいっかい、聞かせて欲しい。


 「青……」


 俺がずっと、ずっと望んでいた言葉だったはずなんだ。


 欲しくて、欲しくて。


 でももらえるわけがなかった言葉なんだ。


 自分からは言えなくて、けれど俺はずっとその言葉を青羽の方から聞きたいって思ってた。


 もいっかい。


 もう一回聞かせて欲しい。


 青羽がもう一度だけ、俺にその言葉を言ってくれたら、その瞬間に世界が終わっても悔いはない……。


 なんて、そんなの嫌だよ。


 今のはナシ!


 これから幸せの絶頂なんだ。さらに上を目指すんだ新しい2人の世界で……。


 だから、青羽……。


 「……青羽、今のって……」


 「だから、アンタのことが好きだって言った」


 長年の片思いは疑心暗鬼な俺を作っていたらしい。


 怒ったように放つ青羽の言葉に不安を吐露してしまった。


 「……マジかよ。揶揄ってるんじゃないだろーな?」


 「は?そんなわけ……」


 怒っているのに真っ赤になっている青羽が可愛くて、俺は思わず彼女の腕を掴んで引き寄せていた。


 「俺の方がずっと前から……」


 唇が触れそうなくらい近くまできた青羽に向けて、俺は想いを口にする。


 青羽の顔が幸せそうに綻ぶのを見た……その時。


 「青羽、今のそれなに?」


 声に驚いた青羽が俺の手を振り解き、彼女は俺から離れた。


 俺と青羽は同時に教室の入り口を見た。

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