第4話 空飛ぶ魔法少女

 伊勢上が部屋にいない事を確認した俺がマンションから逃走して5分以上の時間が経ったが未だに何も起きない。

 てっきり追っ手の1人や2人は来るもんだと思っていたが、どうやら俺のことは完全に伊勢上に一任していたみたいだ。

 追っ手が来ないのはいい。

 いいのだが、ここに来て新しい問題が出て来てしまった。

 それは——


「どこに行けばこの街から出られるんだ?」


 そう、道が分からない。


 異能特区には車に乗せられて来た。

 実家の埼玉県から車で約1時間ちょっと。

 場所的は日本の首都である東京だと思う。

 東京自体は遊びとかで何度か来た事があるし外に出さえすれば道は分かると思ってたんだが、これは参った。

 全くもって知らない土地だ。


 ビルが立ち並ぶTHE・都会といった風景が続いているが東京ではなく似た別の場所。

 広さも結構ありそうだしこのままだらだら歩いていても埒が開かない。


(どこか高い場所から見渡してみるか。)


 街の全貌を見渡すため、誰でも入れそうな高いビルはないかと空を見上げて探し始めたその時だ。


 空から女の子が降って来た。


 漫画やアニメでよくある展開。

 ここから物語が始まる……訳がない。

 このままだと俺の真上に落ちてぶつかり、2人揃ってお陀仏だ。

 物語の始まりどころか人生終了の危機である。


 避けるか?

 まあ今なら避けれはするだろうが、目の前で死なれるのかぁ…それもなんか嫌だな。


 一生モノのトラウマになりそうだと思いながらも死にたくはないので冷静にぶつからない位置へ移動しようとしたが、降って来た女が何か叫んでいた。


「……きを………箒を下さい!」


(……え?箒?)


 なぜ死に際にそんな物を、と思ったが声を聞いて伊勢上だと理解した俺は何かやるんだろうと思い、バッグの中から箒の代用品となりそうな物を漁り出した。


(えっと…棒状の物は……もうこれでいいか。)


「伊勢上!受け取れ!」


 時間がない中、俺が見つけ出した物は定規(折り畳み式30cm)だ。

 これが今俺が持っている物の中でたぶん一番箒に近くて、長い物。

 空に向かって投げたそれを受け取った伊勢上の表情は焦りだった。


「はあ!?ちょっと……こんなのでどうしろと…私は箒って言ったんですよ?」


「うるさい!つべこべ文句言ってる暇なんてないだろ。いいから頑張ってそれでなんとかしろ!」


 我ながら暴論だと思っているが時間がないのは事実だ。

 俺にどうにかする力はないし、後はもう伊勢上に任せるしかない。

 伊勢上自身もそれはわかっているのか、覚悟を決めて小さな定規に跨り出した。


「あぁ…もう!お願い!飛んで!」


 箒に乗る魔女の如き形だが、実際は定規に跨ってるだけの情けない姿。

 物が悪いのだろう。

 全く空を飛べている気配はなく、あわや地面と衝突すると思ったその一瞬、急に伊勢上の体がピタッと空中で静止した。

 しかしそれも一瞬で、すぐさまバランスを崩して地面に倒れた伊勢上。


「おお。やるじゃんか。さすが魔法少女。」


「いたた……定規でも何とかなるものなんですね。一応お礼を言っておきます。ありがとうございました。」


 大した怪我もなく、無事な様だ。

 伊勢上は何とか助かる事に成功した。


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〈設定紹介〉


【魔法少女】


 その名の通り、魔法を使うことが出来る少女の事を指す。20歳を超えた魔法少女は魔女と呼ばれる様になる。

 個体ごとに違う固有魔法と誰でも使える一般魔法の2つがあり、固有魔法の方が強力なものが多いので魔法少女は固有魔法を主体とした戦い方をする。

 一般魔法は空を飛んだり、怪我を治したり、防御壁を作ったりと簡易なものになる。

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2024年10月9日 07:00

逃げるが勝ちだがやる時はやる~超能力者、魔法少女、サイボーグ、科学兵器、色々溢れる現代社会の闇が怖すぎるので早く逃げ出したい~ 杉ノ楓 @sou1234

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