第3話 ※危険な未来
【伊勢上蓮華side】
(全く…ツイてませんね。)
今日は待ちに待った入学式だというのに、まさかこんな事件に巻き込まれるとは…
私は今、高層ビルの屋上から500mほど離れた別ビルを遠視スコープで覗いている。
ブラインドが閉じてあるので中までは見えないけれど、この外観は間違いない。
昨晩、夢で見たのはあそこだ。
私の未来魔法は使い勝手が悪い。
自分の意思で見れる未来なんてせいぜい5〜10秒先が限界だ。
予知みたいに〜月〜日に〜が起きる、といった先の未来を見通せたりはしない。
ただ、本当にごく稀にだけど寝ている間だけ予知夢を見る事がある。
この予知夢の的中率は100%で今まで一度として外れた事がない。
だからこそ、私は今ここにいる。
昨日見た夢では8:30分にあのビルで大爆発が発生した。
時刻まで後10分くらい。
朝早くから見張ってたけど怪しそうな人物も見当たらなかったし、昨日のうちにセットされていたのかも知れない。
出来る限り穏便に済ませたかったけど、時間もないしこっそり潜入するしかないか。
ビルが爆発する夢を見たから爆弾を探させてくれと言ってもどうせ信じて貰えない。
ビルに潜入する為に屋上から建物の中に入った——その時だ。
私の意思とは関係なく未来視が発動した。
これは私の身に危機が迫っている合図。
空から自分を見ている様に、未来の私の姿が脳内に浮かび上がる。
頭に一発、心臓に一発、それぞれ銃弾が撃ち込まれていた。
狙いは正確でマシンガンの様に乱射されている感じではない。
武器は恐らく拳銃の類いだろう。
この高層ビル内で数秒後に私を撃ち抜こうと狙っている敵がいる。
(——あまい)
狙らわれていると分かれば対処は出来る。
私は未来視で見た弾道から敵が潜んでいる場所を逆算し、拳銃で牽制した。
「いきなり頭と心臓を狙うだなんて、随分と物騒なご挨拶ですね。」
未来の情報を元に全て見通しているぞと牽制する。
発砲すらしていないのに狙いがバレていた。
その事実に隠れるのは無意味と判断したのか、敵は姿を表した。
「先程からビルを監視していたな。どこから情報が漏れたのか知らんが邪魔はさせん。」
黒いスーツを着こなした、威厳のある40代くらいのビジネスマン。
オフィスに見事に溶け込んだサラリーマン風の中年男性が、拳銃を私に向けている。
「一般人を巻き込みたくないので外に出ませんか?貴方も騒ぎにしたくないでしょう。」
「なに、安心しろ。」
またしても未来が脳内に浮かび上げる。
頭に浮かんだその光景に、私は外へ逃げる為一目散に窓へと駆け出した。
(マズいマズいマズいマズい。いくら未来が見えてもこれは駄目だ。)
「気付いたか。そう、このオフィス…いや、このビル内にいる人間の全てが私の仲間だ。貴様の逃げ場など存在しない。」
未来で見た光景。
それは四方八方から銃で撃たれて蜂の巣になっている自分の姿だった。
あの男の言う通り、逃げ場はない。
ビルの中は全員敵だし、ずっと自分が殺される未来が見え続けている。
だから一か八かだけど、私は賭けに出た。
このビルは20階建の高層ビル。
私が今いるのが19階で、普通ならこんな高さから飛び降りたら死んでしまう。
だからこそ、ここに賭けてみた。
銃で撃たれない未来は此処にしかない。
箒さえあれば空を飛べたのに、持って来ていないのが悔やまれる。
失敗したらただの自殺、何かしら奇跡を期待するしかない。
(お願い。何か奇跡が起こって!)
願いを込めて、私は窓ガラスを割り飛び降りた。
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〈異能紹介〉
【未来魔法】 所有者:伊勢上蓮華
未来を見通す最強格の魔法。
蓮華の意思で見れる未来は5〜10秒先が限界だが、命の危機が迫っている場合は数分先の未来が自動で脳内に浮かび上がる。
また、突発的に寝ている間に見る予知夢といったものも発動するが、こちらはいつ・どこで・何時何分といった情報が不明だが自身と関係ない夢まで見る事があり蓮華は不便だと思っている。
だが見たものは気になってしまうので見覚えがある場所なら出向いたり、ニュースで確認をするのが蓮華の趣味となっている。
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