元女友達が嫁になったらめちゃくちゃかわいく見えてしまう話
お好み焼き定食(※山本泰雅)
嫁になった女友達にオンナを感じる……
「
金曜日の午後六時過ぎ。同僚の
「わりぃ。待ってる人がいるんだ」
僕は左手を上げる。薬指に輝く指輪を見せながら。
「なんだよ、お前〜。オレより嫁さんの方がいいのかぁ。独身仲間だったくせによ〜」
文句をぶつける盛山だけど、声はずっと明るい。僕が結婚すると言った時には喜んでくれ、祝いと評して焼き肉を
「うらやましいぜ。帰ったら、出迎えてくれる人がいるって。毎朝、起こしてくれるんだろ? オレはスマホの目覚ましなのに」
「盛山にも素敵な人が現れるよ」
「アァ゛、妻帯者の余裕か〜! このやろう」
「痛、痛いからっ! チョークスリーパーかけるなー!」
和気あいあい? なやり取りをした後、僕たちはそれぞれ家路へとついた。
§ § §
自宅の玄関を開けて、「ただいま」と告げる。数秒後、廊下の先にあるリビングから足音が響き、ひとりの若い女性が近づいてくる。
僕のところまで来ると、
「おかえり〜。ジョージくん」
「ただいま。
「もうっ。結婚したんだから、呼び捨てでいいじゃんっ♪」
ビシバシと僕の背中を叩く彼女。今日は暴力を振るわれることが多いな。
「ウ~ン、下の名前を呼べるようになっただけマシか。そんなところがかわいいんだけど」
男にかわいいはないんじゃないか? そんなことを考える僕に、彼女──杏奈は顔を近づけてきた。
明るく染めたミディアムボブに、エプロン越しでも膨らみがわかるぐらいの巨乳。無邪気に寄る美人に、僕はぼっと赤くなる。
「照れてんの〜。ほんと、ジョージくんはかわいい」
「……っ、かわいいとか言うな! ふんっ」
杏奈から逃げるように僕はリビングに向かった。
「ジョージくん。まだ怒ってる?」
「…………」
スーツのジャケットだけ脱いで、食卓に座った僕は杏奈が作った味噌汁を
杏奈が不安そうに見つめるのを、僕は仏頂面を装って食事を続けていた。
からかわれたから仕返し、という子どもっぽいことをするが、いつもやられるだけの僕ではない。
「ねぇ、ジョージくん」
杏奈が僕の名前を呼ぶ。本名は貞治(さだはる)だけど、音読みして『ジョージ』とあだ名で呼ばれているのだ。
「ねえってばぁ……」
今にも泣きそうな杏奈。少しいじめすぎたかも。
「……味噌汁おいしいよ。あ、杏奈」
「怒ってない?」
「最初から怒ってないよ。からかわれたのが嫌だっただけ。僕の方こそごめん……」
「それならいいんだ。エヘヘ、味噌汁おいしいって言ってくれた……♡」
嬉しそうに微笑む杏奈に僕は、
「かわいい」と思ったままの言葉を言う。
それを聞いた彼女は、先程の僕よりもりんごみたいになる。
「ジョージくんのあほっ」
端正な顔をムッとさせた杏奈は凄くかわいかった。
§ § §
僕たちが入籍したのは二ヶ月前。結婚を申し込んできたのは杏奈の方から。
『ジョージくん。アタシと結婚してくれない?』
ファミレスで初めて聞いた時、僕は盛大に水を吹き出していた。疑問が浮かぶ中、その時の杏奈は──とあることで辛そうにしていたから。
女友達だった彼女が流した涙を拭ってあげたいと思ったのだ。
いいよ、と返した僕に杏奈は目を丸くして驚いていた。
勢いのまま市役所で手続きし、そして僕たちは交際0日で結婚した。
おわり
【筆者よりあなたへ】
お読みいただき、ありがとうございます。本編が面白そうと感じたら──♥(応援)と☆☆☆(レビュー)の評価をお願いいたします。温かいコメントも。
元女友達が嫁になったらめちゃくちゃかわいく見えてしまう話 お好み焼き定食(※山本泰雅) @muramitu
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