第3話

だけど不安なのは、大学に行ったら私達離れ離れになって、竜はもっともっとモテて、もっとつりあわなくなること。



「ねぇ、りゅー」



私は竜の手を握る。




「離れたくないよ」




多分、絶対、私の方が竜のことが好きだよ。




「卒業したくない」




竜にとっての私より、私にとっての竜のが絶対、大きい存在だよ。




「答辞なんて読まないでよ……」




私の目から涙が落ちた。


そしたら竜が私を見て答辞を破った。



「ちょ……、何してんの……?」



涙を拭きながら慌てて竜を止める。

だけど竜は更に答辞を破る。



「竜、ダメだよ!本番明日だよ?!」




「だって梨沙が読まないでって言ったから」




ビリビリに破れた答辞の切れ端を私に見せてくる。



「梨沙が止めるなら俺は読まない」


「そんなの無理でしょ……?」



私が切れ端を集めると竜も切れ端を拾い始めた。



「うん、無理だね。

そもそも、これ答辞じゃないしね」




私が頭を上げたら竜が私にキスしてきた。


「俺、梨沙以外好きにならないから」


「え?答辞じゃないって?」



そしたら竜がニコッて笑った。




「本物は先生が持ってる。


今、破ったのは失敗した下書き」



そして私を抱きしめる。


「梨沙が俺を想ってるより、俺のが梨沙のこと好きだと思う」



竜の腕の力が強くなって、何でか分からないけどまた、涙が溢れてきた。




「俺も卒業したくない」




私の涙を竜が拭った。




「だけど、しないと」



相変わらず竜の笑顔は優しい。




「卒業、おめでとう」




不安はこれからもきっと、ズットつきまとうけれど。


それでも私達は明日、卒業します。







2010.05.25

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