第3話
ヒメがはぁ、と落ち着き俺を見ながら笑う。
「格好悪いなー、よしき。立場が逆だろ」
ヒメの正しい指摘に俺は苦笑。
「全く……。先が思いやられる」
「心配とかしてくれない感じ?」
そう聞くと静かに俺を見る。
そして、言った。
「ねぇ、よしき」
「別れないからな」
ヒメの言葉の続きは分かっている。
「何度も言うけど、別れないから」
そしたらヒメが俺の肩に手を置く。
「そうじゃない。私をふって」
波の音が近く聞こえた。
「……は?」
「よしきは私とじゃ幸せになれないから。
大学生になるんだし、もう私みたいな女は辞めた方が良いよ」
ヒメの長い髪が海風に揺れた。
「私がふっても、よしきは優しいから絶対、別れない。
だったらよしきが私をふってよ」
俺は分かる。
ヒメは俺と別れたいなんて思ってない。
自惚れてるって言われたら否定はしないけど。
「それはさ、ヒメ。
俺を思って言ってる?」
でもヒメのことを一番、知っているのは俺だ。
「当たり前でしょ。
よしきを思って言ってる」
「いい加減にしろよ」
自信はある。
だって俺はヒメのことしか見ないで生活してたんだから。
「お前なぁ……。
そんなわがままが通る訳ないだろ?
なんで好きな女をフラなくちゃいけねーんだよ?」
「大学に行けばもっと良い女がいる。
私のことなんか忘れ-」
言いかけたヒメの唇に言葉を遮るように塞ぎ深く、キスした。
「んっ……」
「忘れるわけないだろ」
涙目のヒメにもう一度、深くキスする。
叩こうとするヒメの手を抑えキスを続行した。
「……ヒメより良い女なら、高校にも腐る程いたよ」
唇は離したけれど手は離さなかった。
「それでも俺の目にはヒメしか見えてなかった。
普通の女じゃ物足りない。
さすがのヒメでも、そのわがままは通さない」
「……ふざけんな」
そう言ってヒメは俺の唇に触れた。
手を離したら腕を回される。
「よしきのくせに、偉そうなんだよ」
そして低い声で言われた。
「別れるチャンス、今ので逃したからな」
……あぁ、俺はいま人生最大のミスを犯した。
「……はい。別れませんとも」
だけどやっぱり、俺はヒメのことが愛しくて。
「ヒメが好きですよ。ヒメを愛してますとも」
結局、自らハマりにいくのだ。
2010.05.20
わがままプリンセス 斗花 @touka_lalala
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