第2話

バイクから降りて髪をかきあげたヒメに一瞬だけ、見とれる。



……あーあ、本当黙ってりゃ可愛いのに……。



「何ボーッとしてんの?」



気味悪そうに俺を見るヒメ。


「いやいやっ!

してない、してない!」


慌てて首を振った。



見とれてた、なんて言ったとしたらキモいと言われるのが関の山だろう。



「ふーん……。あ、ねぇ。お腹すかない?」


「うん、空いた」



ヒメの疑問形は全て肯定文で返すのが正しい答えである。



「何かたべよっ!」



そう言ってヒメは近くにあったお店にさっさと入っていく。


「相変わらず少食だねぇ」


俺が注文した品を見てため息まじりに言った。



「そんなんだから細いんだよ」



かと言って別にヒメは大食いではない。

むしろ好き嫌いも多い。


「うわっ、ピーマン。よしき、食べて」


俺の皿には食べ物が増える。



「あのさぁ、ヒメ。

ピーマンくらい食べれるようになりな?


子供じゃないんだからさ」



俺は置かれたピーマンを食べながら、言った。



「は?何か言った?」


「いや……、何でもない」


そんな言い方、恐すぎる。


まぁ、恐い、恐いとか言っても何だかんだ俺はヒメのそうゆうところかなり、気に入ってる。



思えばヒメと付き合い始めてから、俺の高校生活はヒメを中心にしていた気がする。



別に頼まれた訳でも強制された訳でもないのに、俺はいつだってヒメを基準に考えていた。



卒業したら俺は何を考えて毎日を過ごしたら良いんだ…?


パクパクとハンバーグを食べるひめを見て、ふと思ってしまう。



「よしき?早く食えよ」



ヒメに言われて慌てて食べ進める。



「……ねぇ、よしき、」



「ぅわ!お茶こぼした!ヒメ、ふきん!」



慌てる俺を見てヒメは呆れながらふきんを俺の体に投げつける。



「子供じゃないんだからこぼすとか、ないわー」



もちろんだけどふくのを手伝ったりはしない。


「よしきは本当にトロいな」


ヒメはため息をつき店を出て怒られてしまった。



「あのさ、よしき……」


海沿いを歩いていたら、ヒメに不良がぶつかって不良がわざとらしく転ぶ。



「ってーなぁ。あ?喧嘩売ってんの?」



不良がヒメを舐めるようにみた。



「……ごめんなさい」



ヒメは普段は良心的。

先輩や、見知らぬ人にはちゃんとした態度を取る。



「ごめんなさい、じゃねーよ。痛かったんですけど」



不良は何人かいて、俺はヒメの手を掴み立ち去ろうとした。



しかし、前に立ちはだかり通そうとしてくれない。



「つーか、なにイチャイチャしてんの?

まじ受けるんですけど!」



そう言って俺達のことを指差して笑う。


ヒメは無視して目で訴える。



「おいおい、何様?

被害者はこっちなんですけど」



そしてヒメと俺を引き離し俺のことを殴った。



「やっぱ女は殴っちゃ、ねぇ?」



二発目は交わした。


だてに毎日、ヒメのサンドバックをやっていない。



「交わしてんじゃねーよ!」



三発目がくる、と思った時。




「調子乗ってんじゃねぇ!」




ヒメが大声を出し俺の相手を蹴飛ばす。



ヒメを掴んでた不良はいつの間にか腕の中から消えたヒメに唖然としている。



「ヒメ、だめ。ほら、行くよ」



俺は暴れるヒメを捕まえ移動させようとした。

不良も追いかけて来ない。



そりゃ、来ないだろうな。

俺がお前らでも行かないだろうよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る