第5話

そして冴島はしばらくして綿菓子を食べながら聞く。



「いずみ。

人類が初めて話した言葉は何だと思う?」



淳士はうーん、としばらく悩んで真面目な顔して答えた。


「好き、とかじゃねーの?」


「相変わらず暑苦しーなぁ」



そう言いながら冴島は淳士に飲みかけの甘酒を渡す。



「あんまり、美味しくない」


「だったら最初から飲むなよ!」


「もっと美味しいかと思った」



そして冴島の飲みかけを一気に飲んでしまった。


「はっ?!

お前ら、それ間接キス……」


「あ、秀くん意外と純だねぇ」



俺のことをまた面白そうに見てきた。

そしてお参りが終わって言う。



「まっ、私達キスした関係だから」



その言葉に淳士が慌てる様子で冴島の腕を掴んだ。


「は……?


え、お前らまさか、そうゆう関係……」


「誤解すんな!

俺はこんな女と付き合うなんて絶対、嫌だからなっ!」



ハイハイ、と冴島は綿菓子を食べ終える。



「ちょっと、ゴミ捨ててトイレ行ってくる。

おみくじ並んでて」



俺達に有無を言わさず一人、消えていく冴島。



「秀も聞かれただろ?」



冴島が離れていくのを確認し淳士が聞いてきた。


「なにが?」


「人類初の言葉?」



そして淳士は鼻で笑う。



「あいつ、秀のこと結構気に入ってんだよ」



嬉しそうな淳士の意味が分からない。



「珍しいぞ。

あいつがあんなに素に近いのって」



「なぁ、淳士」



俺は淳士の目を見て言う。



「冴島って良い女だな」



淳士が一瞬止まって笑ってみせた。



「だろ?

あいつ、良い奴なんだよ」





そして淳士はグーッと伸びをする。



「秀。騙されない様にしろよ」


「え?」


「いーずみー!後で絵馬書こー!」


「金ないんじゃねーのかよ?!」



戻ってきた冴島に厳しく言う淳士。



おみくじを引いたら大吉だった。



「『恋愛、順調。成功の兆し。告白は今』

だってさ、秀くん!」



「良いなぁ、秀は。

俺なんて吉なのに『恋愛、今は待て』だからな」




なぁ、かなえ。



願いは案外叶うものなのかな。




だったらさ、今すぐってのはもちろん無理だけど。




あとしばらくしたら言ってもいいかな。



「好きだよ。お前が欲しい」って。







2010.05.03

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願いは叶うもの 斗花 @touka_lalala

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