第2-18話 あれから
僕、大田草彦は22歳になりました。
今は普通の大学生として、就活をしています。
高望みはしません。
自分の能力に見合った仕事を探しています。
何事も無難が一番です。
そんな風に思う理由は、高校生時代の分不相応な失恋です。
あの時の僕は、多分、勘違いしていました。すごい人達に囲まれて、多少の努力をして、自分も凄くなったと思い込んでしまったのかもしれません。
特に、体育祭。僕は長距離走の果て、たった一度切りではありますが、風間くんに勝つことができました。
今になって思えば、あれは僕に花を持たせてくれた結果なのかもしれません。でもあの瞬間、僕は本当に嬉しくて、その勢いで告白をしてしまったのです。
信じられないことです。
あの僕が、勉強しかなかった僕が、多くの人が見ている前で、大声で。
結果は……まあ、お察しの通りです。
本当に大きな失敗だったと思います。
あの日を境に、なんだか気まずくなって、それまで仲良くしてくれた人とも疎遠になっていきました。
それにしても、驚いたなぁ……風間くんが、刺されたこと。
結局、犯人は明らかにならなかったけど、噂によると、恋愛関係みたいだ。
風間くんみたいにかっこよかったら、それはもうモテると思う。
僕みたいな人からすると、憧れみたいな感情が芽生えるけれど、本人は大変なのだと思う。刃物で刺されるとか、全然想像できないよ……。
そのまま入院して、何事も無く退院したところは、流石だった。その後については天変地異みたいな感じだ。彼は学校を辞め、そのまま風間グループの次期会長となる道を歩み始めた。
凄いのは彼だけじゃない。
舞浜さんは漫画家として大成功した。今ではSNSのフォロワーが三十万人を突破するような人で、なんだか雲の向こうに居る存在になってしまった気がする。
そして、雪城さんも……。
本当に、奇跡みたいな日々だった。
あんなに凄い人達と一緒に居ることができたなんて。
「草彦くん、また遠いところ見てる」
「……ごめん、ちょっと昔のこと思い出してた」
それはそうと、僕には素敵な彼女ができました。
だから今は、とにかく就職活動をがんばって、人間として自立して、ゆくゆくは、みたいなことを考えています。
ただ、なんだろう。胸にぽっかりと穴が空いたような気分です。何か大切なことを見落としてしまっているような……そんな気がします。
なんて、こんなことを考えていたら、彼女に失礼ですよね。
今の僕は、とても幸せです。これからもきっと、平凡で、普通の人生を歩むのだと思います。
「あー、私が隣に居るのにスマホ見るんだ」
「ごめん。面接の対策しなきゃなと思って」
「じゃあ私は面接官やってあげようか?」
「ほんと? それは嬉し……」
……え?
「どうしたの?」
「……いや、その、えっと、高校時代の同級生が、ニュースになってたから」
「えー、どんなニュース?」
「それは……」
僕はスマホを閉じた。
「やっぱり内緒。行こうか」
「えぇ? すっごく気になるんだけどぉ~!」
唇を尖らせる彼女に苦笑しながら移動する。
僕はこの話を深堀しなくなかった。いつまでも昔のことを追いかけているようで、前に進めない気がしたから。
でも、心の声は止められない。
(……風間くん。君は、本当に)
僕は彼に関するニュースを見た。
その内容は、なんというか、本当に……僕とは住む世界が違う話だったのだ。
終わり
=== あとがき ===
超カオスなお話を最後までお読み頂き、ありがとうございました。
風間くんが二人に手を出した後、登場人物全員闇落ち編を始める構想もあったのですが、リアル多忙、社会的にモテモテ、他に書きたい話も沢山、むしろここで五年後に飛んだ方が面白そう、ということで、こうなりました。
一体どんなニュースになったんでしょうね。
また刺されたのか、それとも……………………。
そんな感じで。
少しでもあなたが笑顔になったなら嬉しいです。
またね(๑˃̵ᴗ˂̵)!
〇作者ページ
オタクに優しいギャルを寝取りたい ~何してもオタクくんの好感度が上がるけど、俺は絶対に諦めない~ 下城米雪 @MuraGaro
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