第6話

光流は色を無くした私の世界に入り込み、時間を掛けて自分の色へ私を染め上げていった。


喜びも、悲しみも、苦しみも全て自分の色に塗り替えようと、私を傷つけては癒した。




歪んだ愛情を一生懸命に私にぶつけてきた。




光流は私の味方だと言うけれど、私はそれをすぐには信じきれなかった。



私はまだ、真実を知らなかったから。



私の信じてきた世界を、信じてきた日下ひとを、私は諦めきれなかったのだ。


だから私は光流を信じきれなかった。

希望を持ち続けてしまった。





「俺と一緒に行くと言え、由奈」


「っ、由奈……駄目だ、言うな……」





───愚かだった。今ならそう思う。


二兎を追うものは一兎も得ず。欲張ってどちらも求めた結果、私は今、どちらも失おうとしていた。




目の前では、ずっと信じてきた男が銃を向け、私の味方を殺そうとしている。


腕からも足からも血を流し、その場に崩れ落ちる光流。私を守るために、悪魔から私を守るために───。





「由奈……ッ、」





光流が、死んでしまう。



やっと本当の世界を知れたのに。

このままでは、私はまた大事な味方を失ってしまう───。

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噛み付いて、愛の証。【燈也編】 anemone @_anemone

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