EP36:ソビエトの新年
1929年1月。
世間一般的には新年と呼ばれる時期が始まり、ソビエト共和国連邦の人々は新たな年が始まったことを嬉しく思っていた。
それはスターリンも同じで
「いや〜、無事に新しい年が迎えられるなんて思いませんでしたよ」
いつものように割烹着を着て調理をしながらそんなことを言っていた。
しかし、この日スターリンが調理していたのは普通の料理ではなく....いわゆるおせちだったので、その場にいた側近達が物珍しい顔をしていたのは言うまでもない。
「あの....閣下、これは一体.......?」
物珍しそうに尋ねるガガノーヴィチ。
その言葉に対し、スターリンは
「あぁ、これですか?これはおせちですよ」
とそう言ったところ、側近達はポカーンとした顔になっていた。
それはガガノーヴィチや本来の世界ならばこの時期に追放されていたレフ・トロツキーも同じで....おせちを見ながら戸惑い半分、興味半分な表情になっていた。
「一言で言えば、年明けに食べる日本の伝統的な料理ですよ」
「は、はぁ」
また日本食かと思いつつ、そう答えるトロツキー。
それもそのはずで......何しろ、この時代ではまだ日本食は有名では無かった上に、おせちはその日本食の中で限られた季節にしか食べられないモノなので彼がそうなるのも無理はなかった。
「.....随分と色んなものが入っていますね」
「そこがおせちの良いところなんですよ」
ガガノーヴィチの言葉に対し、ニコッと笑いながらそう言うスターリン。
そして、おせちが完成すると......スターリンはそれをテーブルへと運び、側近達と共に食事を始めた。
おせちを初めて見た側近達は最初はビビっていたものの.......すぐにおせちの美味しさに気づいたのか、パクパクと美味しそうに食べていた。
それを見たスターリンはやっぱり新年はおせちだなと思ったり、今度は雑煮でも作ろうかなと思いつつおせちを食べていると....どこからか部下がやって来たかと思えば、スターリンの耳元で囁くようにとある情報を話した。
その情報を聞いたスターリンは一言
「それは本当なのですか?」
と言った。
一方、スターリンの言葉に対し部下は
「直接日本からもたらされた情報ですので間違いないかと」
と言った。
それを聞いたスターリンは
「.....まさか新年早々に日本に行くことになるとは思いませんでしたよ」
と言った。
かくして、新しい年になっても忙しいことには変わりはないスターリンであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます