EP35:もうすぐクリスマス

さて、とある日本人がスターリンに憑依する形で転生してから半年以上が経ち.......年末が近づいてきた頃、ソビエト共和国連邦内は良い意味で騒がしくなっていた。

それもそのはずで、何しろ子供のためのクリスマスプレゼントや食材を求める人達で街中が溢れかえっていたからである。

しかし、今年のクリスマスは例年とは違った。

何故なら......子供の欲しがるプレゼントの大半がアニメ関連の物に変わっていたからである。

それに加えて、アニメ関連のオモチャを製造する会社も増えて来ていたため


「すみません、【お化けのダヴィー】のオモチャってまだありますか?」

「えぇ、ついさっき入荷してきたばかりの物がありますよ」


モスクワ市内にあるオモチャ屋には、たくさんのアニメ関連のおもちゃで溢れかえっていた。


「それじゃあ、【お化けのダヴィー】のぬいぐるみをくださいな」

「分かりました」


そう言うと、【お化けのダヴィー】のぬいぐるみに可愛らしい包装をした後にお客さんに手渡す店員。

そのぬいぐるみを受け取ったお客さんは


「ありがとう」


と言うと、店を後にした。

そんなお客さんの後ろ姿を見ながら店員は一言


「.......やっぱり【お化けのダヴィー】は人気だな」


と言った。

ちょうどその時、その言葉を聞いていたもう一人の店員は自慢げにこう言った。


「そりゃあ、俺達のソビエトが誇るアニメだからな」


その言葉を聞いた店員は確かになと思った後、こんなことを別の店員に向けて言った。


「そういえば、アニメ関連で思い出したけど.....【賢者の贈り物】っていうアニメはめちゃくちゃ良いぞ」


【賢者の贈り物】。

それはキリストの誕生の際にやって来た賢者の贈り物をベースとした短編小説で、何度か映像化もされた話なのだが....この世界のソビエト共和国連邦ではアニメ文化が花開いていたので、年末に近いこの時期にこのアニメ映画が公開されるや否や大ヒットしたのは言うまでもない。


「へぇ!!それは見てみたいな!!」


包装紙を補充しながらそう言うもう一人の店員。

その顔には、楽しげな表情が映っていた。


「いや〜、しかし。閣下が暗殺未遂にあった時はどうなることかと思ったが....無事に復活して良かったな」

「だな」


そんなことを口々に言いながら店員達が作業をしていると


「ねぇお母さん!!クリスマスまだ?」

「クリスマスは一月になってからだからまだまだね」


楽しげな親子の声が聞こえて来たため、二人はこの忙しさを作ってくれたスターリンに感謝しつつ、クリスマスに向けた作業に勤しむのだった。

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