EP32:英国にて

さて、ソビエト共和国連邦と日本が同盟を組んだという情報は瞬く間に世界中に広まり....当然ながらイギリスの方にも届いていた。

その情報はイギリス首相であるスタンリー・ボールドウィンの耳にも届いており


「.....奴は狂ったのか?」


今のスターリンがどこかおかしいことを十分に理解していた。


「情報員によれば、例の暗殺未遂事件以降のスターリンは記憶を喪失している模様です」

「.......だが記憶を失った男がここまでするか?」


『ソ連と日本が同盟!?』と書かれた新聞を指差しながらそう言うボールドウィン。

この同盟はボールドウィンにとっては完全に寝耳に水だったのか、その顔はどこかイラついていた。


「それに、噂によれば今のスターリンは日本料理を好んで作っていると聞いた。となれば日本と同盟を結ぶのは必然的だが....そもそもそんな情報は今の今までなかった。ということは」

「スターリンに何かが起こったのは間違いない、ということですね」


部下がそう言うと、コクリと頷くボールドウィン。


「だが....所詮はただの仲良しごっこ。どうせ数年経てば破棄されるのだろうな」

「ですね」


ボールドウィンの言葉に対し、そう答える部下。

というのも当時のイギリスはアメリカに並ぶ程の大国で、ソ連など眼中になかったのだが......心のどこかでソ連を警戒するところがあったからか、ソビエト共和国連邦の動きを常に警戒していた。


「しかし、何故奴は日本料理などを作っているのだ?奴は日本人ではないのだろう?」

「それは分かりません。ただ、物珍しい料理を天皇に振舞ったという話は聞きました」


部下がそう言うと、ボールドウィンはその部下の顔を見たかと思えば


「.....物珍しい料理だと?」


と呟いた。


「えぇ、詳しい内容は知りませんが.....何でも、豚の骨を使った料理らしいです」

「.....は?」


部下の報告を聞き、思わず呟くボールドウィン。

そして、信じられないと言う顔をすると....こう言った。


「....奴は本当に狂っているな」


日本の王族に対して何故豚の骨を使った料理を振る舞ったのかと思いつつ、ボールドウィンはそう呟いた。


「......情報員に伝えておけ、奴に何か変化があれば報告しろ。良いな?」

「ハッ!!」


ボールドウィンの言葉に向け、そう返事をした後に部下が部屋を後にすると


「あの男がああいう風になるとは....一体どういうことなのだ?」


ボールドウィンはスターリンの今までの行動が書かれた書類を見つめながらそう言った。

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