EP18:陰
「.......これは厄介なことになりましたね」
日本の首相である田中義一との会談からしばらく経ち、多くの日本人がソビエト共和国連邦に来ていた頃.......スターリンはその情報が書かれた紙を険しい顔で見ていた。
その紙に書かれていたのは、スターリンが復帰して早々に解体したロシア・ソビエト連邦社会主義共和国側の人間....すなわち残党達がウクライナ人民共和国に対して戦争を仕掛けようとしているという情報で、スターリンはウクライナの問題がまだ終わってないことを実感していた。
「これ、下手したら内戦に突入しかねませんよね?」
「その可能性は十分にあり得るかと」
スターリンの言葉に対し、緊張感を持った様子でそう言うガガノーヴィチ。
それを聞いたスターリンは腕を組むと
「もし仮に私がロシア・ソビエト連邦社会主義共和国側の人々に一声掛けたとしても、この争いが収まりそうな気がしないんですよね....」
どうやっても火に油を注ぐようなこの状況に対し、そう呟いた。
「閣下、どうしましょうか?」
「う〜む....とりあえずウクライナ人民共和国側がどう出るかによりますね」
そう言った後、日本から取り寄せた緑茶を飲むスターリン。
「ウクライナ人民共和国側からは、居場所を突き止め次第捕縛すると言っております。ただ」
「ただ?」
「そのロシア・ソビエト連邦社会主義共和国側の残党が我が国に入国したという情報もあるので、警戒をした方がよろしいかと」
ガガノーヴィチがそう言うと、スターリンは
「分かりました。では我々は国内に潜んでいる残党の捕縛を行いましょう」
キリッとした表情でそう言った。
「ハッ!!」
その言葉を聞いたガガノーヴィチはそう言うと、そのままスターリンのいる執務室を後にした。
「......」
そんなガガノーヴィチの後ろ姿を見送った後....スターリンは緑茶をもう一口飲むと、こう思った。
歴史改変のしわ寄せがここで来るとはな、と...
人の上に立つ者として.....スターリンとして転生した以上、歴史改変の責任を持たなければいけないと男は改めて思ったのか....椅子から立ち上がると、こう呟いた。
「歴史改変というものは.......何が起こるか分からないものですね」
スターリンはそう呟いた後、念のために日本にもこの件を連絡しておくよう伝えた。
そして、その一報を聞いた田中義一もまた戦争が起こる可能性を予知したのか、万が一ウクライナで内戦が起こった時のための準備をし始めるのだった。
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