EP10:食の探求

「閣下、こちらがご要望のラムネにございます」


モスクワ市内のとある研究所にて、スターリンに対してそう言う研究員。

ここはスターリンが急遽設立した食品関連の研究所で、主にお菓子や食品などの開発を行っていた。

というのも、食事を豊かにしないと心が貧しくなる!!とスターリンが主張したことによって、この研究所が立ち上げられたという経緯があるため、食事を豊かにするという珍しいこの時代ではまだ珍しいコンセプトの研究所として活動していた。


「うん、美味しい。これこそラムネですよ」


ラムネを口の中に入れたかと思えば、ニコリと笑いながら言うスターリン。

その様子を見た研究員たちはホッと胸を撫で下ろしたのは言うまでもない。


「閣下、このお菓子は何に使うつもりなのですか?」


ラムネをまじまじと見つめながら、そう尋ねるとガガノーヴィチ。

そんなガガノーヴィチに対し、スターリンは


「何って、普通のお菓子として販売する予定ですが?」


サラッとそう言った後、ラムネをもう一口食べた。


「....は?」


その言葉に対し呆然となるガガノーヴィチ。

それもそのはずで....何せ、今のスターリンの中身は食への探究心が半端ではない日本人だったため、そうなるのも無理はなかった。


「ところで、魚肉ソーセージの方は上手くいってますか?」

「魚肉ソーセージ!?」


スターリンの言葉を聞き、驚くガガノーヴィチ。

そんな部下の反応を見たスターリンは魚肉ソーセージって珍しいのかと思いつつ、研究者の方を見つめていた。


「試食しても良いですか?」

「えぇ、どうぞ食べてください」


そう言葉を交わした後、魚肉ソーセージを食べるスターリン。


「あ、あの....閣下、魚のソーセージは何に使うのですか?」

「そうですね.......肉のソーセージが無くなった時用の対策ですね」

「ヘ?」


もちろん、それは方便である。

しかし、その方便を使ったのがスターリンであるため、その場にいる人間は粛清を恐れて指摘することはしなかった。

最も、本人は粛清する気などさらさらなかったみたいなのだが.......そのことを知らない側近達がビクビクしていたのは言うまでない。


「うん、これは美味しいですね」


そう言うと、スターリンはニコッと笑った後....ガガノーヴィチに向けてこう言った。


「あ、そうそう。他の皆さんには伝えましたが.....ウクライナには賠償金を払いますので、しばらく食事会はできないと思います」

「.....はぃぃぃ!?」

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