EP3:魂の叫び

「民主主義や資本主義よりも社会主義の方がよっぽどタチが悪い!!」


スターリンがその言葉を発した瞬間....広場にいた人々が再び騒つき始め、幹部達の顔が真っ青を通り越して真っ白になり始めていた。

それほどまでにスターリンの発言したことは衝撃的な発言だったからである。


「大体、一生懸命働いたところで上がることも下がることもない給料を獲得する社会に希望なんかありますか!?ないですよね!!それが社会主義っていうものなんです!!」


無理矢理演説に引っ張り出された鬱憤を晴らすかのように、演説台をバンと叩きながらそう叫ぶスターリン。

幹部達は必死になってスターリンを止めようとしたが


「お前らは引っ込んでろ!!」

「私達は閣下の話を聞きたいの!!」


いつの間にかスターリンの話に夢中になっていた人々のヤジによって、その行為は未遂で終わったのだった。


「私は偉大なるレーニンの思想や夢を否定するわけではありません。ですが....友人に金をせびり続けた男の思想を元にした国に希望なんかありません!!マルクスに騙されてはいけません!!」


そう言った後、再び演説台をバンと叩くスターリン。

そんなスターリンの話を聞いた人々は、彼本来のリーダーシップに惹かれていったのか....その話に徐々に心を掴まれていった。

そして、スターリンは真剣に話を聞く観衆達の方を見つめると


「というわけで!!今日この時よりソビエト社会主義共和国連邦はソビエト共和国連邦として再出発することをここに宣言します!!というか、そうでもしないとこの国が腐る!!」


声高らかに宣言した。

スターリンのこの発言を聞いた幹部達の表情はもはや真っ白どころではなくなり、明日の我が身のことを心配していた。

一方、それは彼の宣言を聞いた人々も同じで.......お互いの顔を見合わせながら分かりやすくどよめいたかと思えば、自分たちの未来がどうなるのかが気になったのか、不安げな顔になっていた。


「とまぁ、こんな風に偉そうなことを言いましたが.....私は、皆さんの尊い日常を守るためならばこの身を粉にして働きます!!ですからどうか、皆さんも今日一日を一生懸命頑張ってください!!」


そう言った後、演説を始めた時のようにペコリと頭を下げるスターリン。

そして、舞台袖に入ると


「閣下....自分が何をしたのかがお分かりなのですか!?」


幹部達がスターリンに詰め寄ってきたのだが.......そんな幹部に対してスターリンは


「分かっているからやっただけだけですが....それがどうかしましたかね?」


あっけらかんとした様子でそう言った。


「し、しかし!!」

「....私はね、独裁者になりたくはないんですよ。だからその逃げ道を塞いだだけです」


そう言い切った後、水を飲むスターリン。

そんなスターリンを見た幹部達は、彼が本気だと理解したのか.....自分の首が飛ばないことを祈るのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る