第37話「英雄の本気」
ナギサがオーガロードを追い詰めている中、アメリアとフェンネルは魔道具らしきものを探す。
そして――
「ありました……!!」
――フェンネルが、魔道具を発見したようだ。
彼女は指輪の形をした魔道具をナギサへと見せつける。
(指輪型か……。それで見落としたのか……?)
フェンネルが現在いる位置は、事前にナギサが確認していたのだが――指輪ほど小さければ、ナギサが見落としたことも十分に考えられた。
むしろ、フェンネルがよくこの状況ですぐに見つけたな、という感じだ。
「破壊出来ますか!?」
「やってみます……!」
フェンネルは瞬時に炎魔法で指輪を攻撃する。
――だが、指輪は壊れなかった。
「だ、駄目です……!」
「ある程度の耐久力がある魔道具ですか……」
壊されないように、魔道具自体も結界が張られて守られるようになっているのだろう。
しかし、メインの結界にほとんどの耐久力を振っているはずなので、指輪自体に張られる結界の耐久力は低いはずだ。
もしかしたら、フェンネルはアメリアを助けようと必死で魔法を使っていたので、ガス欠状態になっているのかもしれない。
「お二人とも離れてください……!」
ナギサは二人に指輪から離れるように告げる。
そして、二人が離れたのを確認すると――指輪を氷で覆い、そのまま粉砕した。
「ど、どういう仕組み……?」
凍った指輪がバキバキに砕け散ったのを見て、同じ氷魔法の使い手であるアメリアは困惑していた。
こういった魔法を知らないのだろう。
「見たままの通り、対象を凍らせた後、勝手に砕け散る魔法です。それよりもお二人とも、こちらに来てください」
結界を張っていた指輪が砕け散ったことで、結界がパリンッと音を立てながら割れた。
それにより二人を閉じ込めていたものはなくなったので、自分のほうへ来いとナギサは呼びかける。
当然、ナギサの魔法に翻弄されていたオーガロードは、逃がすまいとアメリアたちを追おうとするが――ナギサが、そうはさせない。
絶え間なく大型の氷柱で攻撃することで、オーガロードは自身を守るのに手いっぱいになっていた。
「あ、ありがとう、ナギサ……!」
「ありがとうございます、ナギサさん……!」
二人は懸命にナギサのもとへまで走ってくると、大量の汗を流しながら安堵の表情を見せた。
閉じ込められていた彼女たちからすれば、先程までの状況はかなり精神的に来るものだっただろう。
ナギサは二人が無事だったことを心から喜び、笑顔でミャーの傍に行くように伝えた。
「ミャーさんも、結界がなくなったのでもう大丈夫ですから、先生とお二人をお守りください」
「んっ……」
ミャーはナギサの言う通り教師の傍に寄り、アメリアとフェンネルを手招きで呼ぶ。
「君は……?」
「少しだけ、あの魔物と遊んできます」
ナギサはそう言うと、瞬時に半円状の氷に四人を閉じ込めた。
そして念のため、水魔法でその氷を包みこむ。
「ちょっとナギサ!? 何してるのよ……!」
「何も見えません、私たちを出してください……!」
氷の中からは、アメリアとフェンネルの苦情のような声が聞こえてくる。
やっとの思いで結界から出てきたのに、また閉じ込められてはかなわないのだろう。
「大丈夫です、終われば出しますので」
「あんた一人で戦うつもり!? 私たちも一緒に戦うから……!」
だからここから出せ、とアメリアは言っているようだ。
しかしナギサからすれば、周りの目がないほうが助かるので、当然無視をする。
「借りますね、アメリアさん」
ナギサは、アメリアが逃げるのに必死になって落としていた剣を拾うと、聞こえないとわかりながら小さな声で呟いた。
そして、氷柱を消し、オーガロードへと向き直る。
オーガロードは怒声を放っていたが、何を言っているのかナギサにはわからない。
「そう怒らないでよ。君も利用されて、ここに召喚されただけだよね」
そのことを、ナギサは哀れだと思う。
本来であればオーガロードはこの場に現れることはなく、命を落とすことがなかったのだから。
「でも、君は僕の大切な友達を殺そうとした。だから僕は――君を殺す」
ナギサがそう呟いたコンマ数秒後――オーガロードは、肉片となってステージへと転がっていた。
まさに一瞬の出来事だった。
ナギサは魔法を一切使用していない。
ただ己の剣技だけで、一瞬にして危険度Aランクの上位種魔物を、肉片へと変えたのだ。
いくら再生能力が高い魔物とはいえ、全身をコマ切れにされてしまえば命のほうが先に尽きてしまうので、もう体が再生することはない。
ただの肉片となったものを見下ろしながら、ナギサは剣を鞘へとしまう。
「
そう言ってナギサは、オーガロードの肉を炎魔法で燃やすと、土魔法で地中深くへと埋めたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます