第11話「あなたはいったい何者ですか?」
「残されてしまいましたね……?」
リューヒたちの後ろ姿を見つめているナギサに対して、困ったように笑いながらシャーリーが話しかけてきた。
現在寝ているアリスを合わせて三人なのだが、シャーリーが残されたのはアリスとナギサの護衛的意味があるのだろう。
リューヒは、シャーリーに信頼を寄せているように見えたのだ。
「えぇ、私がいては足手まといですし、仕方がありません」
「…………」
ナギサが同じ表情を返して首を横に振ると、シャーリーはなぜかジッとナギサの顔を見つめてきた。
隠し事があることと、大浴場での一件によってバツが悪かったナギサは、視線をリューヒたちが走っていったほうへと戻す。
「心配しなくても、リューヒちゃんなら捕まえてくださいますよ」
「えぇ、そうですね」
シャーリーの言葉に同調しつつも、ナギサは内心では反対のことを考えていた。
(剣の腕前はともかく、あの身のこなしだと一度見失った以上は、捕まえるのは至難だと思うけど……)
リューヒの実力全てを見たわけではないが、彼女では捉えられないとナギサは踏んでいた。
だからこそ、組織もあの男を潜入させていたのだろうし。
「お部屋に戻りましょう。アリス様を寝かせてあげないといけませんし」
ナギサは抱えているアリスに視線を移し、彼女の部屋に行こうとする。
もちろん、内側からだとアリスの部屋が正確にどこかはわからないので、シャーリーの案内が必要にはなるのだが。
「非常事態でしたのでうっかりしておりましたが、ナギサちゃんがアリスちゃんを助けてくださったのですよね? ありがとうございます」
歩み始めると、隣に並んできたシャーリーが意外そうにしながらもお礼を言ってきた。
「いえ、たまたまお部屋に戻っていた際に、物音がして気が付いただけですので」
寝ているアリスが攫われそうになっていたように、男が出てきたのは寮の一室だった。
そのため、ナギサがシャーリーの言いつけを破っていなかったことになり、疑われる心配はないのだ。
「それにしましても、一度あの男の手に落ちたアリスちゃんを取り返したということですよね?」
「…………」
おっとりとしていながらもシャーリーの頭の回転は悪くないらしく、ナギサが既にあの男と闘っていたことに気が付いたようだ。
「油断しているところの不意を突いただけですよ」
あまり注目をされたくないナギサは、そう言って誤魔化す。
しかし――
「侵入して人攫いをしようとしているのに、気を抜くでしょうか……? 私でしたらむしろ、誰か来ないか、見つからないか、と周囲に細心の注意を払いますが……」
――シャーリーは、
「学生ですから、油断してくださったのではないでしょうか?」
「…………」
再度、シャーリーはナギサの顔を見つめてくる。
意外と勘が良さそうなので、ナギサはあまり彼女と一緒にいたくはなかった。
ましてや、また明日からの入浴に誘われてしまっても困るのだし。
「そういえば、爆発音は結局なんだったのでしょうか?」
シャーリーから何かを持ち出してくる前に、ナギサは爆発のことを持ち出してみる。
「外壁に大きな穴が開いておりました。おそらく先程の男は、その穴から侵入したのではないかと」
「では、会長たちが向かわれたのは……」
「はい、見失った状態でしたし、近道を通って穴が開いていた外壁に向かったと思います」
逃げ道さえ塞いでしまえば、袋のネズミ。
リューヒたちはそう考えているのだろう。
だけどナギサは、十中八九逃げられたな、と思っていた。
(あの男はおそらく爆発音よりも前から中にいたはずだから、他に出入りできる道があるはずなんだよね……。となれば、先回りしても意味がなくて、男を逃がすことになったわけで……)
この後どう動くべきか、とナギサは考える。
自分と男の実力差は、あの男も十分理解したことだろう。
念のため今晩はアリスの傍にいるとしても、きっと男はナギサとの対決を嫌って仕掛けてこないと考えられる。
だがその場合、男は外に逃げるのか、学園内に姿を隠すのか、ナギサには確信を抱くことができなかった。
「もし本日捕まえることができなければ、明朝にでも学園内をしらみつぶしに探したほうがよろしいかと」
それで見つからなければ、外に逃げたと考えるべきだろう。
穴には監視員を置くだろうし、男がそこを通らず外に逃げているのなら、内通者を疑わなければならない。
「もちろん、そのようにすると思いますが……ナギサちゃん、あなたはいったい何者ですか……?」
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【あとがき】
読んで頂き、ありがとうございます(≧◇≦)
話が面白い、キャラがかわいいと思って頂けましたら、
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これからも是非、楽しんで頂けますと幸いです♪
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