第6話
街が見えてきた……見えてきてしまった。
……いやさ、街が見えてきたこと自体はそりゃ嬉しいぞ? ただ、街に行くとなると、先送りしていたアビスの瞳問題が出てきてしまうんだよな。
「ショウ?」
俺が足を止めつつ、アビスのことを黙って見つめていたからか、アビスは不思議そうに首を傾げながら、俺の名前を呼んできた。
「俺は全然魅力的だと思うんだけど、アビスの瞳ってさ、その、普通に人には怯えられたりとか、しない、のか?」
少し迷った結果、思いきって聞いてみることにした。
アビスは俺が知らないようなことをなんかいっぱい知ってたし、変に誤魔化して目元を隠させながら街に行ったりするよりも、こうやって素直に聞く方がいい結果が得られるかも、って思ったんだよ。
「……魅力的? 本当?」
アビスが深淵のような瞳を俺に向けてきながら、そう聞いてきた。
それだけだったら、どっちの意図で「本当?」と聞いてきているのかなんて全然分からないけど、心做しかアビスの頬は少しだけだけど赤くなっている気がしたからこそ、俺は直ぐに「本当だ」と言った。
「……嬉しい」
深淵のような瞳は相変わらず一切変わることなんて無いけど、俺の言葉を聞いたアビスは分かりやすく頬に手を当て、照れたような仕草をしていた。
……やっぱり普通に可愛い、よな? 俺がおかしい訳じゃないよな?
「ショウも、かっこいいよ」
「お、おう、あ、ありがとう。……って、そうじゃなくて、アビスが普通に街に行っても大丈夫そうかを俺は聞きたいんだよ」
「大丈夫だと思う」
え? マジ?
……俺、今では本当にアビスの瞳のことを魅力的だって思ってるけど、最初はマジで怖かったぞ?
それなのに、大丈夫なのか?
……もしかしてだけど、この世界に生きる人達ってみんなアビスみたいな瞳だったりする? ……仮にそうなんだとしたら、街に行く気が一気に失せてくるんだけど。
アビスだからこそ、あの瞳も魅力的だと思えてるけど、アビス以外があの瞳を持っているのは普通にまだ怖いし。
「行こ?」
アビスが俺の手を引きながらそう言ってくる。
……アビスが大丈夫だって言ってるんだし、別にいい……のか?
「あー、行くのは行くんだけど、金とか無しで街の中とか入れるのか?」
「大丈夫。さっきのゴブリン達が持ってたから」
アビスは俺の手を掴んでいないもう一つの方の手で突然出てきたアビスの瞳そっくりの深淵に手を突っ込んだかと思うと、500円硬貨と同じくらいの大きさをした硬貨? を取り出して、俺に見せてきた。
……この話の流れで見せてくるってことは、これがこの世界の金ってことなのか?
……仮にそうだとして、いつ取ってた……いや、ゴブリンを吸い込んでいったあの亀裂と今アビスが手を突っ込んだ深淵が同じところに繋がっているのだとしたら、おかしくは無いのか。
ガチャ石になる紫色の石を亀裂から出した時に一緒に出していれば良かったんじゃないのか? という疑問が無いわけでは無いけど……あれか。無駄に荷物を増やしたくなかったのか。
「なら、そろそろ本格的に辺りが暗くなってきそうだし、さっさと行くか」
「うん」
「あ、うぁぁぁぁっ!」
そして、街へ入る為の道を守っている兵士? の顔が確認できるところまで近づいたところで、その兵士からそんな絶叫が聞こえてきた。
俺はそんな絶叫を聞きつつ、近づいてきたことで見えてきた門を見て、あの絶叫を上げている人物は兵士というか門番なのか、という現実逃避をしていた。
だってあれ、ここからでも分かるくらい明らかにアビスの瞳を見て恐怖してるし。
大丈夫って話なんじゃなかったのか?
ガチャ中毒〜ヤンデレを添えて〜 シャルねる @neru3656
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