第20話

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ー藤井 星空



「嫌われてしまいましたね」


凄い音がしたドアの前で伊織はニコリと笑ってそう言う。


俺はそれにため息を吐き、歩き出す。



「何処から聞いてた」

俺の横に並んだ伊織はフッと笑い、初めからと言った。


「何やら様子が可笑しかったので跡を付けさせてもらいました」

「………」

「面白い2人ですね」

「…危害は加えるな」

「はい、それは分かってますよ」


伊織はクスクスと笑ってたが、ふと眉間を寄せ真剣な顔をする。



「また、虎牙の奴等が襲撃してきました」

「……襲われた奴は」

「命に別状はありません、ただ怪我が酷く暫くは入院かと」

「分かった」


「セイ、これ以上は虎牙を好きにさせる訳にはいきません」

「……嗚呼、分かっている」

「貴方の気持ちも分かります…ですが、虎牙は敵です」

「…………」

「俺は貴方の甘さは嫌いではありません、仲間を大切にするそんな貴方に付きたいと思う人は沢山居る……ですから」

「分かってる、俺も…覚悟を決める」



「……そうですか、舞猫の件はどうします?」

「………小鳥遊 美咲」

「え?」



小鳥遊 美咲…

あの変わった女の名前。

舞猫と何ら関わりがある女。



「舞猫は今はほっておけ」


俺はそう言い、小鳥遊 美咲の事を考える。




小鳥遊 美咲……


お前は何者なんだ。




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ー天宮 伊織



まっすぐ前を向き歩くセイの背中を見て、俺は気付かれないよう小さく息を吐いた。


堂々と歩くセイの表情は少し曇っていた。



仲間と認めた相手には甘いセイの事です。

かつて仲間だった相手とやり合うなんて、セイにはきついでしょうね。



ですが、これ以上は虎牙の好き勝手にさせる訳には……




それと、あの2人の事を調べる必要もありますね。

セイは放っておけと言いましたが舞猫の方も引き続き調べておかないと。

不安要素は少しでも減らした方が良い。



全く手掛かりのない舞猫でしたが、あの2人に接触すれば何か分かるでしょう。




「……」

「どうしました?」


セイが振り返り此方を見ていた。



「随分、楽しそうに笑ってるな」


セイはそう言いながら、怪しい人を見る目で俺を見つめる。




「…何もするなよ」

「もちろん、彼女達に危害は加えませんよ」

「……」



敵でなければですけど。




「気に入ってるんですね」


俺はそう言ってクスクスと笑った。

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