スマホを忘れて、気付いた安らぎ

白鷺(楓賢)

本編

ある日の朝、いつものように作業所へ向かおうとした時、ふと気づいた。スマホを家に忘れてきてしまったのだ。普段、連絡やちょっとした情報を確認するために持ち歩いてはいたが、特にSNSをチェックする習慣は、もうないので、「まあ、なくても何とかなるだろう」と思い、家に戻ることはしなかった。


ただ、やはりスマホがないと、ふとした時に少し不便を感じるかもしれない。例えば、作業所での空き時間に調べ物をすることができないとか、必要な連絡があればすぐに取れないかもしれないという不安がよぎった。しかし、考えてみると、そんなに緊急の連絡が入ることもないし、何かあれば家に帰ってから確認すればいいことだ、と気持ちを切り替えることにした。


作業所に着くと、最初は少し戸惑った。いつもポケットにあるスマホがないことに、何度か無意識に手を伸ばしてしまった。特に何をするわけでもないのに、手が空くとついスマホを探してしまう。この行動に自分でも驚き、「そんなにスマホを気にしていたんだな」と改めて感じた。


時間が経つにつれて、スマホがないことにも慣れてきた。作業に集中し、目の前のことにしっかり向き合う時間が増えたことに気づいた。ふだんは、空いた時間に調べ物をしたり、連絡を確認したりしていたが、その必要がないので自然と目の前の作業に没頭できたのだ。スマホに気を取られることがなくなったことで、作業所での時間が充実して感じられた。


昼休みも、いつもならスマホで時間を潰すことが多かったが、この日は窓の外を眺めたり、同僚と少し会話をしたりして、静かに過ごすことができた。普段の忙しさから少し解放され、気持ちに余裕が生まれたように感じた。


一日が終わる頃には、スマホがない一日がむしろ快適だったことに気づいた。連絡を気にすることもなく、調べ物をする必要もなかった。そのおかげで、心に少しの「安らぎ」が訪れた。スマホが常に手元にあることで知らず知らずのうちに感じていた「繋がっていなければならない」というプレッシャーが、この日はなかったのだ。


スマホを忘れて得られたのは、ネットから少し離れた静けさと心の解放だった。特にSNSを辞めた私にとっては、それほど大きな変化ではないと思っていたが、それでもスマホがないことで得られる安らぎがあることに驚いた。


これからも、時々スマホを手放して、もっと自分の時間を大切にしていこう。そう感じた一日だった。

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