第39話 風通しの良い学校と暗雲


「なっ......!」



ハ゛コ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ン゛ッ━━!



「「「はっ......!?」」」



 俺が放った軽い"デコピン"はその風圧により校長室のテーブルを真っ二つに引き裂いて壁にどデカい穴を開ける。

 そしてパラパラと壁の破片が穴から落ち、砂埃のカーテンから丸見えになった職員室からは教師全員が目ん玉をひん剥いてこっちを凝視していた......。



「さぁ、"話し合い"を続けましょうか━━」


「お、お前......一体何を......」


「いやぁー間取りが広くなりましたねぇ校長先生。そうそう......修繕費なら今目の前にいるスジモンからの慰謝料でいくらでも出しますから安心してください」


「そ、そうか.......」


「さてと、色んな風通しが良くなったところで保護者の皆様からの意見をもう一度・・・・聞きましょうか。えーっと確か『こんなのは子供同士のただの戯れ合い』......でしたっけ? それなら今から俺流の・・・戯れ合いを皆さんの愛する娘らにやってみせましょうか皆さん......?」


「ひっ......」


「おや、返事が無いようだ......なら話を進めましょうか。お前らに残された選択肢は二つ......今ここで全員俺のパンチでブラジルまでめり込むか、それとも五体満足のまま無事に退学して慰謝料お小遣いを支払うか......」


「いや......その......」


「なんだ? 吃ってる暇なんかねーぞ? 俺はこう見えて気が短いんだ、答えられないならテメェの頭から旅に出てもらう事になるぞ。あと5.....4.....3......」



 すると壁にあいた風穴をチラッと見て再びこっちを向いた真木の親父は、ガタガタと震えながらその場にへたり込んで土下座の体勢に入った。



「す......すみませんでした......ぁ......!」


「あ? 声小さ過ぎて何言ってるか聞こえねーよ。次耳クソみたいな声量だったら冬のボーナスみたいにお前を一瞬で消し飛ばすからな?」


「ひっ......! 誠に、誠に申し訳ございませんでしたああああああっ!!」


「くくくっ......マジでダッサいなコイツwww」



 カシャッ━━!



「なっ......なにを!」


「何って......高校生を脅した挙句返り討ちに遭って土下座させられてるヤクザの写真を撮ってアンタの"オヤジ"とやらに送りつけてやろうと思いましてね」


「っ......! それはちょっと待ってくれ!!」


「はぁ? お前なに甘ったれた事言ってんだ? まぁ仕方ないか、なーんの罪もない一般人脅して返り討ちに遭ったなんて知られればこの先どうなるかはアンタが一番わかってるもんな? 恐らく今後この地域に住めなくなるのは俺じゃなくてアンタら親子の方だ。それと、さっきの脅しはボイレコとそこにある防犯カメラにバッチリ記録してるんで然るべき所へ提出するからよろしく━━」



 俺は校長室に元々から設置されていた防犯カメラをクイクイと指を差してアピールする。

 


「そ、そんな.......」


「なんせ暴力団を名乗ってか弱い・・・高校生相手に恐喝だもんなぁ......大正十五年法律第六十号、暴力行為等処罰に関する法律に思いっきり引っかかってますら。慰謝料に上乗せで3年以下の懲役または30万以下の罰金お疲れ様でぃーす」


「パパぁ......」


「っ......」



 俺は項垂れている真木の親父の耳元に近づく━━。



「舐めてかかった"高校生"に呆気なく返り討ちにされた気分はどうだ? 東誠会直系藍染組若衆の真木洋二さん?」


「な、なんでお前俺の......」


「さあね。しかしさっきまで講釈垂れてたヤクザ様が愛する娘の前で年下の高校生に土下座だなんて......なんとも無様だな、オイ」


「くっ......!」


「悔しいか? 残念だったなぁ、お前が俺を脅そうが暴力でねじ伏せようがこの部屋に入った時点で既に結果は決まってたんだよ。俺への策を碌に練らず己に自惚れ素っ裸で勝負を挑んだテメェの頭の緩さが招いた負けだ、チンピラ崩れ━━」



 親父は俺の言葉に頭を上げる事ができないまま項垂れ続けていた。



「パパぁ......いつもみたいに私を守ってよぉ!」


「くっ......俺はもう......終わりだ......」


「はははっ! ダッセェ、ダサすぎるよお前。まさか16にもなって親にそんなセリフ吐くとは......お前はココを保育園と間違えてるのか? 最後の最後で笑わせんなよ」


「佐田ぁ.......」



 真木は目に涙を浮かべてものすごい悔しそうな剣幕でこちらを見るが、俺は軽くスルーして話を続ける━━。



「さて、今日から晴れて"中卒"になった皆さんとその保護者の皆さん......話は以上だけど履歴書・・・の書き方以外で何かご質問等はございますか?」


「.......」


「なければさっさとお家に帰って求人雑誌でも読み漁ってください。ねぇ校長センセ?」


「ええ、ぜひお引き取り下さい。貴方たちのような人間には一刻も早くこの神聖な校舎から立ち去って頂きたい。そして二度と我が校の敷居を跨がないようにお願いします」


「っ.......!」


「あっそうそう、木上のお母さん。貴女が近所の旦那とダブル不倫してる証拠を旦那さんの部署宛に送りましたんでこの後のお家でも最高の修羅場をお楽しみくださーい」


「は!? アンタ何言って......」


「確か"木上雅也"さんって貴女より3つ年下の旦那さんでしたよね? そして不倫相手は”矢口正光”さん......そこにいる矢口麻里子の父親ですよね?」


「なっ......!」


「な、なんなのそれ......一体どう言うことよっ!?」


「おや、知らなかったんですか? それはビックリ......それじゃあ皆さんさようなら。この後の勃発する昼ドラみたいな素晴らしいドロドロの争いに祝福を」



 俺は漫画のようにキーキーと喚いてる連中を校長室から強引に追い出して無理やり扉を閉めた━━。




「佐田君、キミはなんと言うか......タレントよりも探偵か殺し屋、若しくは異世界転移した方が向いてるよ」


「校長先生、それ褒めてます......?」


「すみません校長先生......彼がこんなに捻くれた性格になったのは担任である私の教育不足です......」


「風花先生、それ更に俺を傷つけるからやめて......」


「いやいや、これは私なりの褒め言葉だからね? 私はこう見えて異世界に転移した最強主人公モノが好きでね......少し憧れているんだよ。例えば30代の童貞が全身ヌルヌルの変態に転生し、前世で30代だったとは思えないほどの子供っぽい思考回路でイタいあだ名をつけるあの━━」


「その話はやめましょう校長先生、なんの作品か分かりませんが偏見が過ぎます」


「じゃあこの話は終わりにして......。佐田君、君には聞きたいことが山ほどあるんだがその中でも一つだけ聞かせてくれ」


「......なんでしょう?」


「木上さんの不倫の証拠なんてどこで集めたんだ? 君が壁に風穴を開けた力よりその方が気になって仕方ないよ」


「俺は色々な準備を怠りませんからね。アイツらに教室で虐められた瞬間から桜庭や野上と同時進行で奴らの家族構成から家族内での関係性、趣味や"トイレの時間"まで念入りに調べていたんですよ、こんな事になる事を予測してね。そして今日木上の母親と矢口の母親から一瞬だけ同じ部屋の匂いがしたんです、それで今日も二人は”昼顔”してるんだなと思って行動に移しました」



 そう......作者も読者の皆さんもすっかり忘れてると思うが、俺は吸血鬼になってから聴覚と嗅覚が異常に発達している。

 だから奴ら全員の匂いが俺には事細かく区別できるんだ、でもまさか今日も木上と矢口の不倫カップルが自宅で一発やってるとは......ヤリ部屋じゃなくてヤリ家はやっぱ売り飛ばすのかな?



「なるほど......やはり君は只者じゃないな。その用意周到さと恐喝をモノともしないどころか逆手にとって脅し返すその太々しさには感心するよ」


「うん、これ褒められてないよね絶対」


「だが何より......君のイジメに気がつけず本当にすまなかった。心よりお詫び申し上げる」


「私からも君の担任なのに気づいてあげれなくて申し訳ありませんでした。佐田くんが望む処分があれば私は真摯に受け止めます」



 校長先生と風花先生俺に対して深々と頭を下げる。

 だが今回のことに関しては先生達ではどう頑張っても気がつく事は困難だっただろう。そもそもアイツらは隠れたところでやっていたし、俺自身も先生にバレて中途半端に奴らが制裁を受けるよりこの手で復讐したかったから敢えてイジメが漏れないように手引きしていたんだから。



「先生、そんなの気にしなくていいですよ。今回あのチンピラから俺を守ろうとしてくれたじゃないですか、か弱い女性なのに」


「それは......教師として当たり前だよ」


「その当たり前が出来ない人が多いんですよ。それじゃ俺はこの辺で......」



 俺は校長室を後にするがその直後、俺のスマホのバイブが制服のポッケを震わせる━━。



「もしもし」


『佐田......たすけ......』


「もしもし!? どうしたっ!?」


『よぉ人気者、お前の大切なオトモダチ・・・・・は俺らが預かってる......これ以上コイツに危害を加えられたくなければ今から指定する場所に来い。来るのが遅くなればコイツは俺らのオモチャだ━━』


「おいっ! お前一体......!」



 俺が問いかけようとするとLIZE電話はブツリと切られた。

 そしてすぐさま電話を掛け直したが呼び出し音がいつまでも鳴り続けるだけで全く応答せず、代わりに送られて来きたのはとある場所を示す位置情報だけだった━━。



*       *       *


更新が遅れて申し訳ございません。

近況ノートにもかきましたが作者に色々あり、次回の更新は年明けになると思われますが御了承下さい_:(´ཀ`」 ∠):。

では皆様良いお年を!

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寝取られ吸血鬼と氷の美少女 〜推しと浮気している幼馴染がエサにしか見えない〜 くじけ @Kjike17

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