恋愛小説として読むか、震災小説として読むか。

信号すら点かない停電といえば、震災絡みの停電になるでしょうか。
弱い人間をここまで守り、強くしてきた電気が無くなり、ヒトはただヒトになりました。

私も震災の停電を経験し、夜というものがこんなに暗いとは……と初めて思いました。
暗さなんてものじゃなく、本当に闇。
これなら百鬼夜行もあるでしょう。

一方で、動物の一種としてこの夜に昂っている自分もいました。
星空を見て星座を想像した人たちや、月明かりを頼りに愛しい人のところに夜這いに行く貴族の気持ちもわかるような気もしました。

終始イチャついているようなこの作品(私のメンタルは瀕死)。
電気がなく、できることがなく、時間が実はこんなにあるんだと気づき、お絵描きになる。
これが人間の創造力であり、思いやりだと思います。

イチャイチャ作品としても素敵ですが(私は辛いです)、震災が人間の良き本質を教えてくれた……という意味の作品として読むのはどうでしょうか。