第7話 子供たちへのプレゼント②(完)

 大人たちに異性のプレゼントを配ると、やがて子供たちが生まれる。

 それは必然だ。

 欲望のある所に、その法則は引き継がれる。

 そして、サンタの属する組織は、A町とB町のそれぞれから金銭を受け取る。


 数人のサンタは雑談をしながら、荷台に様々な大きさの包みを積んだ。その中身は細工が施された玩具だ。

「今夜は、子供たちへのプレゼントだな」

「子供たちの喜ぶ顔が見れないのは残念だがな」

 一人のサンタが言うと、もう一人が、

「その代わり、大人の喜ぶ顔が見れるじゃないか」と笑った、


「そろそろ町に行くとするか」

 一人のサンタはそう言って、ポケットから白いものを取り出した。

 どうやら、サンタの白い付け髭のようだ。

 子供たちに姿を見られた場合、怖がらせないようにその口ひげを付けるのが習慣になっている。

 人相が悪い中年男も紅白色の帽子と同じ色の衣装で温和に見える。

 只のまやかしに過ぎないが、見かけは重要だ。

 雪の中をこの容姿で町の中を駆け抜けると更に優しく見える、

 雪はこんな怖いサンタクロースの仕事内容のイメージを払拭するためのものかもしれない。


 一人のサンタが、ソリの椅子に座り、煙草を取り出して、火を点けた。

 そして、「準備OKだ。行くぞ!」トナカイの手綱を引き、号令をかけると、

 もう一人のサンタが何か気づいたのか、

「おいおい、髭を付け忘れているぞ」と戒めた。

 指摘されたサンタは、

「おっといけね」と言って、吸いかけの煙草を地面に捨て、髭を付けた。

 その行儀の悪いサンタを見た別のサンタが、「気をつけろよ」と言って、

「煙草を吸ってるところもそうだが、捨てるのを誰かに見られたらどうするんだ!」と戒めた。

 けれど・・

「大丈夫だ」

 注意された人相の悪いサンタは平然と言って、

「捨てた煙草は、雪がちゃんと覆って隠してくれるさ」と、うそぶいた。

 その男の言った通り、

 地面に落ちた吸い殻は雪を溶かしたが、すぐにその上を雪が降り積もり、吸殻は見えなくなった。

 まるで、全ての罪を隠すように。


 雪の降る闇の中、

 サンタが乗ったソリのシャンシャンという鈴の音が響き渡った。

 その音を聴いた子供たちの顔に笑顔が浮かんだ。    

           

                             (了)

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魔雪地獄 ~ 髭のないサンタクロース(短編) 小原ききょう @oharakikyo

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