小学三年生くらいのときの記憶

 「ほら、ダイヤくん! ぎゅー!! 」


 ジェリーおねえちゃんが、小さくてか弱い僕に優しく抱きついてきた。彼女の柔らかい体が、僕の顔を優しく包み込む。なんとなく頬が熱くなって、胸がドキドキした。


 「お、おねえちゃん、息ができないよ……」


 全然そんなことないんだけど、恥ずかしいから苦し紛れの言葉を放つ。


「ええ? そう? ごめんごめん! 」


 そういって、ジェリーおねえちゃんは僕をゆっくり離した。



 甘くてとろけそうな目が、またゼロ距離で僕をのぞき込んでくる。動揺を隠しきれない僕のことをジェリーおねえちゃんはくすっと笑った。


「ねえ、私といるとき、ずっとドキドキしてるでしょ? 」


「そ、そんなことないもん。お、おねえちゃんがドキドキしてるんじゃないかな……」


「ふふふ。そうかもねえ~!! 」


 こんな感じで散々からかった後、ジェリーおねえちゃんは面白がって僕の頭をなでてきた。


「え、何? 何? 」


「ううん、なんでもないよ? 最近、元気なのかなって思って」


「別に、どうもないもん。元気だもん」


「……りんちゃんと上手くいってないんでしょ? 」


「は、はあ? 」


 と言って、僕は勢いよく体をびくつかせた。



 りんちゃんって、僕の初恋の女の子。小学三年生になったばかりのときに、その可愛さにひとめぼれしたんだ。ツインテールの、フリフリのスカートをはいたクラスで一番の人気者。


 けど、そんな子、中々うまく話せないし、仲良くなれない。


 それを知ってるから、こうやってからかってくるんだ。


「大丈夫よ。あたしも、最近カレシに振られたばっかりだから! 」


「前言ってた、部活の先輩? 」


「そう! これから高校受験だからって、ひどくない?? 」


 たしかそんなこと言ってた。中学二年生になって初めてできたカレシが一個上の先輩で、なんか別れたがってるとか。


「そ、そうなんだ」


「ねえ! あ、そうだ! 」こう言って、ジェリーおねえちゃんが僕の両方のほっぺたに手を当てて、顔を近づけてきた。


「な、なに? 」


「あたしと付き合って? 」


「……え? 」

 




 


 


 


 

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大学生の僕、ちまたで有名なストーカーになっちゃった~きれいなお姉さんに惚れただけなのに警察に捕まるってマ? @tf76u64sufrsu

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