大学生の僕、ちまたで有名なストーカーになっちゃった~きれいなお姉さんに惚れただけなのに警察に捕まるってマ?

@tf76u64sufrsu

プロローグ

 人通りの少ない夜道を、スタイルの良いきれいなお姉さんがひとりで歩いていた。新しく建てられた無数の一軒家が立ち並ぶ静かな住宅街で、彼女の足音がコツコツと響き渡る。


 幻想的で、まるでシンデレラのようなシチュエーション。


 「……」


 そんな中、彼女は背後を気にしていた。何度も後ろを振り返って、大きなダイヤモンドのような瞳でくりくりと周りを見まわしている。表情は硬く、まるで何かにおびえているようだ。


 僕は、おびえる彼女の姿を電柱の陰からそっと覗いていた。


 最近、彼女はこんな感じで普通に帰宅もできないくらいにとめどない恐怖に襲われている。まるで、猛獣から身を隠す小動物みたいに。


 (大丈夫。僕がついてるから)と心の中で呟いて、僕はぎゅっと握りしめたこぶしを胸の上にあてた。


 そして―


     ドン!!!


 右足を勢いよく振り上げて、そのまま硬い地面を蹴った。すさまじい音が鳴る。その音を聞いた彼女は細い体を可愛くびくつかせ、僕がいるほうを振り返らずに走り去っていった。


  ミッション成功。


 

 こんな風に、僕は毎日彼女の後をつけて、彼女が家に帰るお手伝いをしている。暗い夜道を怖がっている彼女が、できるだけ早く帰宅できるように後押ししてあげるんだ。


 彼女に、振り向いてもらいたいから…


 明日も、よろしく。


 





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る