第35話 目撃者②大臣
「また、お前たちか」
部屋に入って早々、どかりと椅子に腰掛けた大臣。椅子がマジで壊れる五秒前。
(ミシェル!?)
「わしの見た内容を教えろ、とな。少し見目がいいからと言って、陛下に重用されていい気になるなよ」
(あ、)
椅子は音を立てて崩れた。部下らしき人が慌てて助け起こしている。部下らしき人、なんで毛布持ってるの? やばたにえん。
「だ、大丈夫ですか?」
「ふん! 陛下がお前たちに期待していないことが、これでわかったな」
無理やり過ぎる発言に、言葉を失う
「その美貌で陛下を籠絡したのか?」
あたしの身体を上から下まで舐めるように見てくる。
(きも)
(大臣のそれ、陛下にも不敬な気がするのだが……)
(なら、そう言ってやってよ!
「そ、その。その発言は、陛下に不敬になりかねないかと……」
(まじで言った! 小物なのに!)
「……ごほん。では、あの日わしが見たことを話そう」
(思いっきり話変えた!!!)
(お父様、頑張った?)
(頑張った、頑張った。小物なのに)
(お父様、小物小物言われすぎて悲しい……)
「あの日も遅くまで城に残っていた」
(うわぁ、ブラックぅ)
(遅くまでって……お父様、末端貴族でよかった)
「夜12時を回った頃だろうか」
(うわぁ……)
(お父様、尊敬しちゃう)
「部屋をノックする音が聞こえた。すでに部下たちは帰していたから、誰か忘れ物でもしたのかと思い、声をかけた」
(え、いい人? もしかして、いい人? 部下を先に帰すとかいい人?)
(お父様、定時ダッシュ決めるのやめて、部下を先に帰すようにするよ……)
(それはそれで、部下気まずくね??)
「おい、誰かいるのか、と問うた。でも、返事はなく、またノックが聞こえた」
(ちょいこわじゃん)
「仕方ないので、ドアのところに向かったのだ。すると、ドアを引っ掻くような音が聞こえた。流石におかしいと思い、軽い防御魔法を展開しながら、ドアを開いた」
(ホラーになってきた)
(まぁ、幽霊の目撃談について聞いているからな)
「廊下の端に、いたんだ……ピンク頭のメイドが……」
「それでどうなさったんですか?」
「ドアを勢いよく閉めて、叫んだ」
(思ったより可愛い反応してる)
「その時間も勤務している近衛兵やメイドが現れ、そんなものはいないと言われた」
(ちょっとかわいそうになってきた)
(お父様、そんな目にあったらちびっちゃう)
(汚ね)
(ぴえん)
「それが……あの日の全てだ……もういいか? 思い出したら怖くなってきた。あれを持ってこい!!!!!!」
(あれ?)
(あれとは?)
「はっ」
そう言って部下の人は、大臣の肩に優しくピンク色の毛布をかけた。
(……え、かわいい)
(お父様もこのギャップは想定外)
(めっちゃ怖がってるし、とりま、帰らせてあげる??)
(そうだな……)
「その、思い出させてしまい、申し訳ございません。今日のところは一度、おかえりください」
「な!? こ、ここ、怖がってなんていないぞ!?」
部下の人に支えられて、大臣は帰って行った。
(なにあれ、めちゃくちゃかわいいじゃん。今回の人は可愛さ選手権でもしてる??)
(お父様もあれは可愛すぎると思う)
(残りの聞きたいことは、手紙のやりとりにしてあげる?)
(そうだな)
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「外では決められたセリフしか言えません!」~残念令嬢の心の声 碧桜 汐香 @aoi-oukai
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