第14話 高音

「はいこんばんはー。どうも、紫吹ルカです」


 今日は配信日だー! やったね!


 今日は特に疲れた日だったから、配信があるのは嬉しい。


「んじゃ、今日は告知通り雑談やっていきましょうかね」


──雑談きたー!


──今日何してた?


──こんばんは!


「んー? 今日はね、ずっと寝てたよ。ちょうどさっき起きて配信の準備してたとこ。ふふっ、まじで焦った」


 だから若干寝起き声なのか。いいね。


 私は普段からコメントをしない派だから、こうやってルカくんとコメント欄の会話を楽しんでる。


──ルカくん普段は結構低い声だけど、高い声はどこまで出せるの??


 そのコメントに、ルカくんは「お、いい質問だね」と答えた。


「確かに、俺他の人よりも低い声な気がするな。あーあー。どう?」


──俺よりは低いよ


──ルカくんクール系だから声も低く感じるのかも


──確かに低いかも


 コメント欄の言葉に、私もうんうんと共感する。


 ルカくんは、いわゆる低音イケボってやつだ。


 そんな彼がどこまで高い声を出せるのか、みんな気になっているだろう。


「やっぱり低いんだな。そんな俺がどこまで高い声を出せるのか。実は俺もわからん」


──えーなんでよ


──今出してみて


「うぅ、わかった。ちょっと待ってな」


 そう言うと、ルカくんは「あーあー、ゔゔん」とチューニングを始めた。


「じゃ、いくぞ」


 一体どんな声が聞けるのか。ドキドキの一瞬。


「アーアー、コンニチハ……」


 …………。


 ちょっと待って。


 え、誰???


「コンバンハ。シブキルカデス」


 めちゃくちゃ高いやん! え、天井突き抜けた!?


 てか、地声高めの私より高い声出てないか!?


「コノコエ、ドウ? ケッコウガンバッテダシテルンダケド」


──www


──そんな声出せるの!?


──女子の私より高くてウケるw


「オレ、ジツハコンナコエモダセルミタイ。アラタナハッケンダネ。キャハハ」


 高い声なのはもちろん、普段とのギャップに思わず笑ってしまう。


「──ってな感じで、高い声も出せるクール系VTuberの紫吹ルカです。よかったら推してね」


──ギャップありすぎw


──まじでウケたw


──もっかい出してよ


「え、もう一回? しょうがないな。雑談配信だし、みんなの希望には応えていくよ」


 やった! コメントした人ナイス!


「アーアー。マイクテスマイクテス。オレノナマエハシブキルカ。クールケイブイチューバーヲヤッテルヨ。ヨロシクゥ」


 いや最後の「ヨロシクゥ」ウケるんだけど!!!


 ひぃ、お腹痛い!


──www


──やばい過去一おもろいかもw


──ルカくんこれからもその声出してw


「ばか、この声はレアだからそんな滅多に出さないわ。アーカイブには残すから、何度でも聞いていいぞ」


 やったぁ! アーカイブに残してくれるんだ! 


 てっきり、今夜限りの高音ボイスかと思った。


「んじゃ、高音の話はこれで終わりにして、次の話題くれ」


──自分で考えろw


──こっちに振るなw


──高音おもろかったよ


 こうして、滅多に聞けない高音ルカくんの配信は、次の話題へと移っていった。


 いやー、にしても面白すぎたな。


 また次の雑談配信で出してくれないかな。


 ……今度は、私もコメントしてみようかな? なんてね!


 

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表ではクール系VTuberが裏ではギャップ萌えでしかなかった らまや @natsu0817

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