第13話 ビビりその2

「ゔぅん。失礼。ちょっと喉がイガイガしてて。はい、こんばんは、どうも」


 咳払いも素敵だよ、ルカくん。


 今日はいつもよりも推しの配信を楽しみにしていた。


 なぜなら、ホラゲ配信の告知が出ていたからだ。


 以前のギャップ萌え配信(第2話)では、ルカくんのビビりなところがリスナーにバレていた。


 それを知っている人たちからすれば、今回の配信は見どころばかりだろう。


「今日は最近話題のホラゲ、やっていくよ。──ん? 怖くないのかって? 大丈夫、俺クールに進めてみせるから」


 そんな大口を叩きながら、ルカくんはゲームを始めた。


──どうせ序盤でビビるってw


──このゲームやったことあるけどまじ怖い


──頑張れルカくん!


 コメント欄も賑わっているようだ。


「えっと、ここはこうして……」


 意外にも、冷静にプレイするルカくん。


 凄い、あれから成長したんだ……!


 一人で感心していると。


「……ん? なんかカサカサ……え、待って今の音……うわっ!!」


 突然驚いた声を出したルカくん。


──どうした!?


──カサカサとか聞こえたか?


──今のシーン別に驚くところじゃないでしょw


 コメント欄も騒然としている。


 何事かと思っていたら。


「む、虫がいる! 何これ! ゴキブリ!? いやでも変な形してる! しかも触角クソ長い! 待って無理!」


 ギャーギャー喚きながら、ルカくんのドタバタする音が聞こえてくる。


 ルカくん……ホラゲだけじゃなく、虫にもビビりなのね。


 また一つ、ギャップを知れた。


「ゴキジェットどこあったっけ!? うわ、こっち来んな! おいおい、飛ぶの聞いてないって──ぎゃあ!」


 未だに叫んでいる……頑張って退治するんだ、ルカくん。


──さっさと倒せ!


──虫にビビってるのおもろいクール系どこいったw


──頑張れルカくん!


「よ、よし! ティッシュで包んだ! あとはこれを外に……ぎゃあ!出てくんなよ! せっかく捕まえたのに!」


 惜しい、ルカくん!


「あ、あぁ、壁にいるんだけど……無理しんどい……いやでも、早くこの戦いを終わらせないと……!」


 そう言うと、バッという音とともにルカくんの「よっしゃ!」という声が聞こえた。


 そのまま足音が遠ざかり、数十秒後戻ってきた。


「よっしゃ、逃がせたぞみんな! ごめん、配信中ってことすっかり忘れてた! でもやったぞ」


──頑張ったねルカくん!


──今日の配信虫退治配信か?w


──今からまたホラゲやろう


「うん、ちょっと変なところで止まっちゃってたし、今から再開するね。マジでごめんみんな」


 そのまま、ルカくんはホラゲを進めた。


 驚くほどに順調に進んだホラゲは、クリアして終わりを迎えた。


「ふぅ、一時はどうなることかと思ったけど、なんとかクリアできたな。みんな、最後まで見てくれてありがとう。今日は特に、ありがとな。んじゃ、今日はこの辺で。チャンネル登録と……あとあれだ、高評価、コメント待ってます。そんじゃ、お疲れ様」


 そう言って、配信を閉じた。


 今日のビビり具合、面白かったなぁ。しかも、ホラゲじゃなくて虫に。


 逆に、ホラゲ耐性ついてたのにも驚いた。


 怖がりだったのに、あれから練習したのかな。


 ──やっぱルカくんは努力家で凄いや。

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