第17話 2人きりのベッドの上で

 その後、大和は優衣を連れて自分の部屋に戻って来ていた。そして、


「それじゃあ優衣、電気を消すぞ」


 少しだけ緊張した声音で大和がそう言うと。


「……ええ、お願いします」


 優衣はそう返事をしたので大和は電気を消して、先にベッドに寝転んでいた優衣の隣に少し距離を置いて寝転んだ。そして、


「それじゃあ優衣、お休み」


 大和がそう言うと。


「ええ、お休みなさい、大和くん」


 優衣もそう言ったので大和は余計な事は考えず早く寝ようと思い、そのまま目を瞑ったのだが。


(……ん?)


 左腕に明らかな違和感があり、大和は目を開けて自分の腕を観て観ると、何故か優衣が大和の左腕に両手を回して抱き着いていたので。


「……優衣、一体何をしているんだ」


 大和がそう質問をすると。


「折角大和くんと一緒に寝られるのですから、大和くんに抱き着いているだけですよ」


 優衣はそんな事を言ったのだが、そんな風に抱き着かれると大和の腕には優衣の小柄な体系には似合わない意外と大きな胸がしっかりと当たっていて。


 眠ろうとしていた大和の頭はすっかり覚醒してしまい、大和の頭の中は直ぐに煩悩で一杯になってしまった。


 ただ、余計な事をして優衣に嫌われたくない大和は優衣に離れてくれという事も、優衣を無理矢理腕から引き離す事も出来ず。


 大和は優衣に抱き着かれたまま、ベッドの上で固っていた。


 しかし、そんな大和にもチャンスが訪れて。


「……ふあっ」


 そんな風に優衣が可愛らしく欠伸をしたので。


(……よし)


 大和は心の中でそう呟くと、優衣の方へ体を向けて右手で優衣の頭を撫で始めた。すると、


「えっと、大和くん、どうしてまた私の頭を撫でているのですか?」


 優衣はそんな事を聞いて来たので。


「お前が随分と眠たそうにしているからな、リラックスして貰って早く眠らせてあげようと思ったんだ」


 大和がそう言うと。


「確かに私は今凄く眠たいですが、折角大和くんと2人で寝られるのにこのまま寝てしまうのは少し勿体ない気がして……」


 優衣は少しだけ不満そうにそう言ったので。


「心配するな、優衣、お前が家で昼寝をする様な事があれば俺も添い寝くらいならいつでもしてやるよ」


 大和が優しい口調でそう言うと。


「……本当ですか? 約束ですよ?」


 かなり眠たそうな口調で、それでもハッキリと優衣はそう言ったので。


「ああ、約束だ」


 大和がそう答えると、優衣は安心したのか寝転んだまま小さく欠伸をしたので。


「お休み、優衣」


 大和が再びそう言うと。


「……はい、お休みなさい、大和くん」


 そう言うと優衣は静かになり。


 暫くすると「すう、すう」と優衣から小さい寝息が聞こえて来たので。


「……そろそろ良いか」


 そう言うと、大和は優衣を撫でていた右手を止めて、優衣に抱き着かれている左腕を優衣からゆっくり離すと。


「……ふう」


 大和はその場で一息ついて、自分もそろそろ寝ようかと思ったが、先程までの優衣との短いやりとりで完全に頭が目覚めてしまったので。


「……少し頭を冷やして来るか」


 大和はそう呟くと自分の部屋を出て、1階にあるリビングへと向かった。


 そして、大和はソファーに座り台所から持って来た冷たいお茶を飲みながら、スマホを取り出してアルバムを開いた。


 そのアルバムの最初のページには優衣が小学生の頃の写真があり、アルバムが進むごとに写真の中の優衣は少しずつ成長して行き。


 大和は写真の中の優衣を観て、少し頬を緩めつつも。


「我ながらキモい趣味だな」


 大和はそう呟いた。


 これらの写真は全て優衣本人に許可を貰って撮ったモノだが、こんな風にアルバムにしている事は優衣を含めて誰にも伝えて無く。


 大和は時々、今の様に幼い頃の優衣の姿を観て優衣との思い出を振り返りつつ、自分の心を落ち着かせているのだった。


 その後、胸の高まりが少しずつ収まり眠気が襲って来た大和は、万が一何かが起き無いように今日はこのままリビングのソファーで寝ようかと思ったが。


「今日は一緒に寝るって言ったし、優衣との約束破るわけにはいかないよな」


 大和はそう言ってリビングを出て自室に戻ると、優衣が寝ている自分のベッドに寝転んで。


「……お休み、優衣」


 そう言って優衣の頭を少し撫でてから大和は目を瞑り、暫くすると大和も静かに眠りに付いた。

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清楚でお淑やかなクラスのマドンナは幼馴染の俺の前でだけ常にだらけて甘えて来る 向井数人 @tyuuni

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