五の上 戦神項羽、ここに立つ!
項羽、という青年をご記憶だろうか。
かつて始皇帝の行列を見て、「俺が殺してやる!」と剣を抜いた、あの血気盛んな若者である。
(第三回参照 https://kakuyomu.jp/works/16818093086063998484/episodes/16818093086493960038 )
その後、始皇帝の追及を恐れた項羽は、叔父の
その
太守とは、郡の責任者である。
始皇帝が整備した郡県制においては、中国全体をまず48の郡に分け、その下へ、さらに細かな行政区画として県を置いていた。現代日本では県の中に郡が設置されるが、それとは上下関係が逆なわけだ。
だから、郡を統べる太守というのは、県令よりもさらに格上。ほとんど一国の王に匹敵するほどの、相当に強大な権力を持つ役職であった。
その太守
「私も
と考えていたのである。
そこで
「近ごろ
私はこの地をきちんと治めているし、民はしっかりと心服している。だから今こそ兵を起こして、私も大義を為すために立ち上がろうと思う。
さいわい
だが、家に帰るなり、
「男たるもの、自ら立って事を為さねばならん。どうして鬱々と他人の下に身を屈していられようか。
私は
ならばいっそ、奴を殺して
私は明日、お前を連れて
お前は
項羽が
「分かった!」
と元気よく同意して……
翌日。
みなで
「
しかし
それなのに今、反逆を
俺がお前を殺して、不忠は良くないという見本にしてやる!」
項羽は剣を抜き、
そして、うろたえる人々に向かって声をはりあげた。
「
だからもう殺した!
今から
周囲の人々は、震え上がって地にひれ伏した。
そこへ、
大将たちが怒って言う。
「よその国に来て
項羽は言った。
「
今、この大陸は乱れている。
二人は顔を見合わせた。
もともと
「あなたの義兵に参加させてください。民を苦しみから救いたいのです」
項羽は喜び、この二人を
「
こうして、10日も経たぬうちに、項羽・
*
「軍を立ち上げるなら、まず武勇と戦略に優れた大将を得て、それと力を合わせるべきです。そうでなければ孤立してしまい、功をなすことはできますまい。
この二人を招いて大将となさいましたら、大きな助けになりましょう」
「項羽。お前みずから行って招いてこい」
と命じた。
項羽はすぐさま出発し、季布を案内人として
二将の拠点に近づくと、まずは
「
会見の席で項羽が言った。
「
あなたがた二将軍には、世に
俺は叔父の
前々からあなたがたの名前は知っていたよ。尊敬もしていた。だからこうしてみずから来て大義を説いているんだ。
もし俺たちと力を合わせて王業を為そうという気持ちがあるなら、山を下りてきて
「
君は義兵を起こしたと言うが、力が足りないかもしれん。意気が世を
だから、君の勇気と力を試させてほしい。
もし君が万の軍勢にも匹敵するほどの力を持っているなら、我ら二人とも君に従おう。そうでないなら……君の話は、『虎を描きて成らず、かえって犬に類す』みたいなものだ」
『画虎不成、反類狗』――虎を描こうとしたが画力が足らず、犬みたいになってしまう。力が足りないのに分不相応の事業に取り組んで、大失敗してしまうことの
こういう言い方をされて、引き下がれる項羽ではない。
「よーし、やってやろうじゃないか。何をすれば信じる?」
「そうだな……この山の
もし君がこれを押し倒して、また立て直すことができたなら、その力は天下無敵と言えるだろう」
項羽は荒く鼻息を吹いた。
「じゃあ行くぞ!」
(つづく)
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