君に赤色の花を添えて。
最悪な贈り物
君に赤色の花を添えて。
「お兄ちゃん!入るよ〜!」
そう言いながら扉を開けて、その中に入る。
窓が開け放たれ、光が差し込んでいる部屋の中。
ベットの上には花びらが舞っていた。
「お兄ちゃん!!起きて!!!!朝だよ〜!!!」
そう言いながら私はお兄ちゃん。グレーゴルお兄ちゃんの体を揺らした。
「ん………んん…舞ってくれ…あと5分……」
「だめだよ!!!お兄ちゃん、いつもそうやって起きる時間を伸ばして朝ごはん食べないで、自分の力を頼ってそれで遅刻しちゃうんでしょ!!!早く起きないと、魔法学校遅れちゃうよ!!!!」
「んん…わかったよ………」
ある村の隅の家。
農道が引かれるその村の一軒。
私のお兄ちゃんは、白く、よろよろとした髪の毛を揺らして起き上がる。
お兄ちゃんは、目を開くと、それと同時に、服の間からいっぱいの花が咲いた。
「っつぅ………せっかく良い夢見てたのに……」
「良い夢ってどんな?」
私は家のカーテンを閉めながら、聞くと、「ふわぁ〜」とあくびをして、「グレーテとご飯作る夢…」
相変わらずこのお兄ちゃんは…私のことが大好きなんだから…
私も少しにやけながら心の中で呟くと、「そんなの今日の夜にでもしよ?」というと、何も言わず、お兄ちゃんはコクリと頷いた。
父と母が海外に出勤し、家の中は私とお兄ちゃんの二人だけ。
お兄ちゃんがベットから降り、そして歩き始めると、花びらが舞った。
開花症候群。
お兄ちゃんがその身に宿す病気、及び、呪いの一種だ。
生命力を少し奪いながら綺麗なお花を咲かせる病気。
この病気は治療法が確かにあるらしいんだけど、今のところ、その治療法はお値段が高く、特に体に支障もきたしていないようだし、今はまだ観察中ということになっている。
「ああ…それじゃあ…そろそろ行って_」
「だめ!!!」
そう言いながら私はお兄ちゃんの口の中にフランスパンを詰め込んだ。
私はニコニコと、笑顔をお兄ちゃんに向けながら、「ゆっくり食べてね!!私の愛の籠ったお手製のパンなんだから!!」と言うと、口に詰め込まれたパンを両手で押さえながら、少しずつ食べていった。
_______________
「全く…グレーテは心配性なんだから…」
そう言いながら、俺、グレーゴルは自分の花の蔦を村の周りに生い茂る木に引っ掛けて、ターザンのように移動する。
正直、魔法学校なんて行きたくない。
根本的な理由として、俺は今、イジメというものに合っているからだ。
クラスの女子の一人。
キキという女子を中心としたグループに虐められている。
しかし、そんなイジメは別に幾らやってくれても、俺は気にしない。
どうせ、必要もないような教科書を破られたり、必要のない椅子を壊されたりするだけだ。
教科書なんて、そもそも、見なくても、黒板に映る魔力の文字を見ていれば授業の内容は大体わかるし、魔力を使って蔦を増幅し、そして、それで椅子やらを作ればいいだけ。
彼女のやっていることなど、屁でもない。
でも、それ以上にグレーテに心配させるのは絶対に回避しなければいけない。
だから俺は今日も魔法学校へと行く。
魔法学校へ行く主な目的としては、この、開花症候群を治すために、俺が医者になり、そして、自分で自分を治すため…だが、別に既に開花症候群の原理はもう理解している。
こう見えても天才肌なのだ。
まあ、治したとて、メリットが見つからないし、今後未来で治すことはどうか怪しいが…
「はあ…学校だりぃ…」
_______________
起眞市と呼ばれるこの魔法の街に存在する学校。
起眞市立魔術魔法総合高等学校。
略して起魔高は、今日も平和だった。
5時間目の水魔法の授業が終わり、そして、いつも通り無い俺の椅子の代わりに俺は自分から生やした蔦で椅子を作り、そしてその蔦に腰を下ろしながら全ての授業を終わる。
「なあ!!」
すると、聴き慣れた荒々しい声が聞こえた。
横を見ると、木製の教室の中にある椅子なしの俺の席の隣に突っ立っていたのは、クラスの中心人物のキキだった。
キキは、何か機嫌の悪そうな顔をしていた。
「ん…は、はい…きょ、今日はどうしたんですか…?」
俺はこれ以上のトラブルを無くすために、震えた声で聞き返す。
すると、俺の机を蹴りつけた。
そして、俺は忘れず、「ひっ!!!」と声を漏らす演技。
キキの取り巻きがくすくすと俺を見ながら嘲笑う。
俺はそれに腹が立ちながらも、これをやっていないと、キキは自分が舐められていると感じてさらにイジメをエスカレートさせてくるので、仕方がないことだと、自分に言い聞かせる。
「あのさぁ…ちょっと機嫌が悪いから…少し中庭来てくんない…?」
すると、親指をキキの背中に立てて、こっち来いのジェスチャーをする。
「な、なんで…ですか…?」
俺は念のために聞き返すと、キキは、「ッチ…」と舌打ちをして、「良いから早く来いよ…」と言う。
「わ…わかりましたよ…」
_________________
俺は怯える演技をしながら中庭に行くと、そこには、大柄の男
が二人、構えていた。
「キキ。例のやつ、連れてきたぞ。」
大柄の男二人…多分巨人族であろう、その二人は、背後を指さして言った。
「それじゃあ、少しだけ…」
するとキキは自分の杖を持ち出し、「スリンプ」と唱える。
そして杖の先からでた光を俺は見てしまったせいで、
意識が保たず、俺は眠りについてしまった…
________
「っは!?」
そして、次に俺が目を覚ますと、両腕は岩のようなものの中に埋められていた。
一瞬で気がついた、これは拘束魔法だと言うことを。
「な!!!なんだこれ!!!!!」
俺は起き上がり、両足も拘束魔法で埋められていたことに気づく。
「おお?ずいぶん強気じゃんか!!いつものグレーゴルくんはどうしたんだい?」
そして、俺が起き上がると、その目の前には信じられない光景があった。
それは、中庭の噴水の隅で、火傷だらけにされていたそれは…
「お前ら…」
妹の…グレーテの姿だった。
妹の周りには杖を握りしめて、嘲笑うキキの姿。
「お前ら…グレーテに何した…?」
「みりゃあわかるだろ?一番最初のお前と同じようにしてやったんだよ。」
一番最初の俺…?
そういえば、キキは自分が舐められないように、初めて会ったやつには自分の力を見せつける癖があった。
キキがこの起魔高に来た時、初めにやったイジメの行為が、俺の花を火魔法で燃やすことだった。
俺はそこから2ヶ月程度はその傷は治らずに居たせいで、どれだけグレーテに迷惑をかけたことか…
なのに…こいつらは!!!!!
「てかさ…このグレーゴル…こんな拘束魔法で縛り付けてて大丈夫なのか…?」
大男の一人が言った。
「大丈夫だろ。それにこいつの武器といえば、この小さな開花症候群の花だけだし。」
もう一人の大男が言う。
「は!?か、開花症候群って…それ!!!!ま!!!まずい!!!!逃げるぞ!!!!」
震えた声で、大男の一人が言いつつ中庭から離れようとする。
するとキキが殺意の籠った声で、「おい、逃げんじゃねぇ」と言い放つ
だが、大男はその言葉にある事を告白した。
「お前ら!!!!開花症候群ってのは!!!!ストレスが溜まるほど花の開花速度が早くなるんだ!!!!!そのせいで、病人は怪物に変身する!!!!そういう呪いなんだよ!!!!!良いから早く逃げろ!!!!!そいつらは!!!そいつらは…!!!!!」
ああ。その通りだよ…
開花症候群に掛かってるやつは…
「化け物だ…」
だが、もう遅い。
次の瞬間、逃げようとしていた大男の一人の足が千切れる。
「ぐああああ!!!!!!!!!」
「は…!?」
それを見て、キキの顔が真っ青になった。
「おい!!!!大じょ_____」
そして、もう一人の大男が、その両足のなくなった男に近付こうとして、一歩踏み出したが、次の瞬間、スムージーのように赤い血と細切れ肉だけを残した。
「な、何これ!?」
そう言いながら、取り巻きの女子たちが悲鳴をあげるが、その悲鳴も次の瞬間、すぐに治った。
「は…わ…わ…私…こんなの聞いてないよ…!!!!!」
キキは腰を落として、全身を緑色の蔦に巻きつけられ、そして、赤い目を光らせる俺を見ながら、言った。
「妹に手ェ出したら…それは生きてはいけない奴なんだ…」
「わ、私は…!!!!あの大男に言われてやっただけで!!!!私は何にも!!!!!!」
握っていた魔法の杖を離して、そう言った。
「知るかよ。」
俺はそう言い放ち、キキを真っ二つにした。
「おっと…力が…」
俺は力みすぎて、後ろの噴水をも真っ二つにしてしまう。
まあ、良いか。
__________________
「この学校で、妙な殺人事件がありました。被害者は5人…誰か心当たりのある人はいますか?」
誰も手をあげない。
知っていたとしても、あいつは死んで当然の人間だった。
「先生!!!!」
そして、俺は手を挙げた。
「な、なんでしょうか…グレーゴルくん…」
「この中に犯人は居ないと思います。なぜなら、みんなはキキさんの事を慕っていました。だからです」
「そ、そうですよね!!!!そうですよね!!!首席のグレーゴルくんが言うのであれば間違いないですね!!!!」
先生はそう体に飲み込むと、この話は終わり!!と言い、授業を始めた。
グレーテ…
お前との静かな生活は、誰にも邪魔させないよ。
俺は昨日からずっと寝ているグレーテの心に呼びかけた。
あとがき
なんで1時間で3800文字書ける…?
君に赤色の花を添えて。 最悪な贈り物 @Worstgift37564
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます